研究課題/領域番号 |
23500592
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
林 良太 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40288949)
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研究分担者 |
川平 和美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20117493)
下堂薗 恵 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30325782)
余 永 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (20284903)
緒方 敦子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (40305123)
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キーワード | リハビリテーション / 知能ロボティクス / 医療・福祉 / 脳神経疾患 / バーチャルリアリティ |
研究概要 |
本年度は,脳卒中片麻痺患者を対象とした立体視知覚異常検査システムの改良を行い,臨床データを収集して提案する検査システムの有効性を検証した. 偏光フィルタを取り付けた2台の液晶プロジェクターを用いて,被験者にコンピュータプログラムで描いた2つの検査用立体画像を仮想現実空間上に表示し,偏光メガネを通して視認した2つの画像について遠近の判断を問う検査システムを作成した.その際,図形の大小関係や稜線の視覚情報などにより立体視を行わずに遠近の判断ができるような要因を排除し,両眼視差を脳で処理することによってのみ遠近の判断ができるように,表示する検査用立体画像を工夫した.そして,両眼視差の度合いを変化させた検査課題を複数回ランダムに表示して,その正答率により立体視知覚異常の程度を定量化するシステムを構築した.脳卒中片麻痺患者に対して検査試験を実施したところ,脳卒中片麻痺患者の中で正答率が低い患者を検出した.この結果により,提案する検査システムを用いて,立体視による知覚が正常にできていない脳卒中片麻痺患者の検査が可能であることが示された. ただし,半側空間無視などの症状を持つ脳卒中片麻痺患者の場合は,物体を注視することができないため,立体視の知覚を検査する対象にならないことが考えられる.そこで,本検査システムを適用する前に,被験者が検査用立体画像を注視して検査課題に対応できるかどうかを確認するため,現実の2つの物体を提示してそれらの遠近を問うことのできる実物体練習装置を新たに作成した.そして実物体練習装置により,検査課題に対応できると判断された脳卒中片麻痺患者に対してのみ,提案する検査システムで検査試験を実施したところ,正答率が低い患者を検出した.以上から,提案する手法により,両眼視差を処理する脳機能に異常がないか検査可能であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に,提案する検査システムの対象者が脳卒中患者の場合,検査課題を正しく理解しないままで遠近の判断を適当に回答してしまう可能性があり,検査課題を被験者が正しく理解していることを確かめるための工夫が必要であることを課題として挙げていた.本年度になって,実物体練習装置を作成し,これを用いることによって,この課題を解決することができた.また,立体視知覚異常検査システムを用いた検査結果から,両眼の視力差が大きい場合は立体視による知覚が正常にできない可能性があるという知見を得ることができた.なお,検査を繰り返すと,正答率が上がる傾向にある事実から,立体視知覚機能を回復するための訓練支援システムを考案できる可能性を見出すことができている.以上により,本研究課題に対する研究は,現在まで概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに得られた研究成果をもとに,立体視知覚機能を回復するための訓練システムを開発する.これまでの検査課題とは異なる訓練課題を考案し,遠近の判断が可能な両眼視差の閾値レベルで,遠近の判断を問う課題を繰り返し行う訓練システムを構築する.その際,逐次被験者に判断の正誤を示して立体視知覚機能の回復を促し,かつ,訓練データを保存し,訓練の経過を分析することのできるコンピュータプログラムを開発する.そして,開発した検査システムと訓練システムとを併用して,臨床データを収集し,脳卒中片麻痺患者を対象に,立体視知覚機能回復の可能性を検証する.そして,得られた結果と知見をまとめて,研究成果として学会に発表する. また,体性感覚や触覚と視覚とを融合した空間知覚が正しく行えることを検査するシステムの実現可能性を検討する.計測制御技術を応用して,立体視した目標に向けて手を伸ばす動作を測定し,視覚空間で捉えた目標の位置に正しく手を到達させることができるかを検出する機構を考案する.立体視した目標に手を伸ばして掴むという日常生活で行われる基本的動作における障害を検出し,その治療に役立てることのできる新しいリハビリ支援システムの展開につなげる.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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