研究課題
交通事故等による高次脳機能障害は就労年齢に起こることも少なくない.本研究では,職業の認知的要求度を調査するために「仕事中の記憶など認知的負担に関するアンケート」作成し,外傷性脳損傷等による高次脳機能障害者であり就労している15名を対象として実施した.対象者の認知機能は神経心理学的検査と外来診察時の観察により評価し,アンケート結果と比較検討した.認知機能は,ワーキングメモリ,論理的記憶,近時記憶,注意・処理速度,遂行機能,知識・判断力,視空間・構成,発言・行動の制御の8つの領域に分けて検討した.領域別の障害は,多い順に論理的記憶障害10名,ワーキングメモリ障害7名,近時記憶障害7名,発言・行動の制御障害5名,注意処理速度障害3名,遂行機能障害3名,知識・判断力障害3名であった.認知的能力とアンケート結果の認知的負担とをプロフィール化して対比すると,ボトルネック・パタン8名,マッチ良好パタン3名,マッチ不良パタン4名に大別された.ボトルネック・パタンでは,認知的能力の低い領域が足を引っ張る形で総じて要求水準の低い職務内容となっており,保存されている能力が活かされていない.マッチ不良パタンでは,何らかの記憶障害の負担が能力を上回っていたが,就労を継続できていた.この場合,それなりに代償手段が利用できているとはいえ,1名を除いてかなりの負担感やストレスを抱いており,医療的なフォローを要していた.「仕事中の記憶など認知的負担に関するアンケート」は,外傷性脳損傷等による高次脳機能障害者の認知的負担を領域別に調査するのに有用であり,神経心理学的評価結果との対比により,職業の適合性を明らかにすることができる.就労前の職務内容の調査にも応用できる可能性があり,今後,就労継続支援事業所等を手始めに,利用者に実施して情報を得て,復職指導に活かせるかについて検討を継続したい.
外傷性脳損傷者の復職指導に関する研究-「職業の認知的要求尺度」作成の試み-(科学研究費助成事業 基盤研究(C) 課題番号23500596)報告書「就労している高次脳機能障害者に対する「仕事中の記憶など認知的負担に関するアンケート」調査」(PDF版)をダウンロード可能
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