本研究の目的は、描画・書字能力(正確さ・読みやすさ)と視覚機能、手指の筋活動の関連性を明らかにすることである。平成25年度は、①改良版上肢機能評価システムで収集した健常学齢児の描画課題から基準データの算出、②課題遂行中の手指筋活動評価(EMG)の予備実験、さらに健常学齢児と発達障害児に描画課題中の眼球運動、手指EMGの同時計測の実施を目標としていた。 ①については、2~6年生の健常男児54名による描画課題中のはみ出し距離、速度、筆圧レベルについて各学年の平均値を算出し基準値とした。1辺10cmの三角形の線引き課題では、はみ出し距離は学年の進行に伴い短くなる、速度は学年の進行に伴い遅くなる、筆圧レベルは学年の進行に伴い高くなる傾向にあった。②については、予備実験の結果、課題遂行中の手指EMGの適切な計測が実施できなかったため、課題遂行中の動作分析に変更し、健常児・者の描画課題中の眼球運動と同時計測を実施した。描画課題中の眼球運動を分析した結果、1辺10cmの三角形の線引き課題では、健常成人は描いているところよりも少し先を(1辺で3~4回程度に分け)確認し、そこペンが到達すると先を見るという繰り返しで1辺を描いている傾向にあった。はみ出しがない児では、ペンの位置に視線を固定する傾向にあった。一方はみ出しが多い児では、ペンの動きに視線が追いつかない、ペンの位置よりも後方に視線を向ける様子が見られた。10cmの正方形内に大きく三角形を描く自由描画課題では、健常成人は線引き課題と同様の方略であるがより前方に視線を向けていた。線引き課題ではみ出しがなかった児では、健常成人の線引き課題と類似した方略をとる傾向にあった。一方線引き課題ではみ出しが多かった児では、1辺の描き始めに前方となる頂点に視線を向けてはいるが、ペンの位置に視線を戻さない、ペンの位置よりも後方に視線を向ける様子が見られた。
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