研究課題/領域番号 |
23500599
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
福島 真人 青森県立保健大学, 健康科学部, 助教 (60530227)
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研究分担者 |
尾崎 勇 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (90241463)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 呼吸 / 気づき / 痛み |
研究概要 |
平成23年度においては,研究実施計画の2)呼吸相が痛覚情報処理に及ぼす影響について,5)運動誘発電位の呼吸相による変化について,主に研究を行った。2)の研究では,呼息相と吸息相に痛覚刺激を与え,主観的な痛みの程度,痛覚誘発電位および交感神経活動が呼吸相で変化するかを検討した。健常成人を対象に,脳波,交感神経皮膚反応(SSR),指尖容積脈波(DPG)を連続的に記録した。刺激は,呼息時または吸息時に左手背に表皮内刺激電極で電気刺激を与えた。刺激強度はWong-Bakerスケールで2(軽度の痛みで少しつらい)とした。刺激毎に,わずかな痛みの場合には右の示指,軽度の痛みで少しつらい場合には中指の伸展をするように被験者に指示した。脳波は加算平均し,痛覚誘発電位であるN1,P1を解析した。SSRも加算平均し,最大陰性振幅を解析の対象とした。主観的な痛みの程度について,Wong-Bakerスケールで1(わずかな痛み)と被験者が判断した回数は,全270回中,吸息時は116回で,呼息時は180回であった。N1振幅,P1振幅,SSR振幅はそれぞれ呼息時で小さかった。呼息相と吸息相に一定強度の痛み刺激を与えた結果,主観的な痛みの程度が呼息相で減弱し,N1,P1,SSR振幅も減少した。これは,同一強度の刺激であっても,呼吸相の違いにより痛覚情報のインプットが変化すると考えられる。5)の研究では,経頭蓋磁気刺激装置を用いて大脳運動野皮質を刺激し,対側の短母指外転筋から運動誘発電位(MEP)を計測した。呼吸フロー機器のモニターを見ながら呼気時と吸気時に刺激を与え,得られたMEPの振幅を比較した結果,呼気時に比べて吸気時にMEPは増大した。このことから,吸気時に手指筋に至る皮質脊髄路の活動が促通されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,健常人を対象に,痛み刺激や弱刺激,経頭蓋磁気刺激に対する感覚皮質や運動皮質の反応を,脳波等の生理学的手法で捉えると伴に,心電図,脈波,呼吸CO2濃度,胸郭運動,交感神経皮膚反応などの自律神経活動を同時に記録して,呼吸相および心循環がそれらの情報処理へ及ぼす影響を明らかにすることである。平成23年度は,痛み刺激や経頭蓋磁気刺激に対する感覚・運動皮質の反応を捉えることに成功し,成果を学会等で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究を継続して行うが,2)呼吸相が痛覚情報処理に及ぼす影響についてはAδ線維を選択的に刺激すると考えられている表皮内刺激電極のほか,C線維を選択的に刺激する電極を用いて脳波や自律神経活動の違いを比較する。また,5)運動誘発電位の呼吸相による変化については,より限定した部位を刺激することができる経頭蓋磁気刺激装置を用いて運動誘発電位(MEP)を計測する。その他,3)呼吸相の違いが感覚閾値強度の刺激のawarenessに与える影響や4)心循環が痛覚情報処理に及ぼす影響についても進めて行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な消耗品,被験者への謝金,データ解析を補助してもらう際の謝金,論文別冊代金などの他,成果発表をするための旅費として使用する。
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