研究課題
平成24年度は昨年度に引き続き,研究実施計画の2)呼吸相が痛覚情報処理に及ぼす影響についてと,5)運動誘発電位の呼吸相による変化について,研究を進めてきた。2)の研究では,刺激強度をより詳細に設定できる刺激装置(PAS7000)を用いて,痛覚閾値レベルとその4倍の刺激強度で痛み刺激を行い,痛みスコア別に,誘発電位と交感神経活動を比較した。脳波,交感神経皮膚反応(SSR),指尖容積脈波(DPG),呼気CO2濃度を連続的に記録し,CO2濃度が20 mmHgを越えた時(呼息)か下回った時 (吸息) に刺激した。被験者は刺激毎に痛みの主観をWong-Bakerスケールを参考に判断した。痛みスコアは,閾値刺激では吸息時に1と判断した数が呼息時45回よりも多く,閾値4倍刺激では,吸息時に2と判断した数が呼息時67回よりも多かった。痛覚誘発電位とSSRは,閾値刺激と閾値4倍刺激のいずれも,呼息時で振幅が小さかった。DPG振幅は,刺激から約4拍で低下をはじめ,約6拍で最大に低下した。痛みスコア別に脳波,SSRを加算すると,N1,P1,SSR振幅はスコアに比例して変化した。呼息相と吸息相に痛覚閾値とその4倍強度で刺激を与えた結果,どちらの強度でも痛みの主観が呼息相で減弱し,N1,P1の振幅も減少した。また,SSR振幅も呼息相で減少し,DPG振幅の低下も減少した。これは,刺激強度レベルに関わらず呼息時に痛みが抑制されやすいことを示している。5)の研究では,安静呼吸,深呼吸,強制呼吸時の各呼吸相に,運動閾値の1.2倍強度の経頭蓋磁気刺激を行い,運動誘発電位と呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)との関係を検討した。呼吸相の違いにより,MEP面積に有意差が認められたが,振幅,潜時については認められなかった。閾値の1.2倍強度ではMEPの振幅,潜時の変化を検知できない可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は,健常人を対象に,感覚皮質や運動皮質の反応を,脳波等の生理学的手法で捉えると伴に,心電図,脈波,呼吸CO2濃度,胸郭運動,交感神経皮膚反応などの自律神経活動を同時に記録して,呼吸相および心循環がそれらの情報処理へ及ぼす影響を明らかにすることである。平成24年度は昨年度に引き続き,同じテーマに対して実験方法をわずかに変化させて,データの信頼性,妥当性を高めることができた。また,その内容については学会等で発表した。
研究計画の2)呼吸相が痛覚情報処理に及ぼす影響については,これまでのデータを整理し,成果発表できるように準備を進めて行く。5)運動誘発電位の呼吸相による変化については,刺激の頻度や強度等を変えて検討していく。3)呼吸相の違いが感覚閾値強度の刺激のawarenessに与える影響,4)心循環が痛覚情報処理に及ぼす影響についてはデータ採取できるように経過鵜を進める予定である。
実験に必要な消耗品,被験者への謝金,実験補助またはデータ解析をしてもらうための謝金,成果発表するための旅費,報告書の印刷代等に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (6件)
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