研究課題
平成25年度は,研究実施計画の2)呼吸相が痛覚情報処理に及ぼす影響と3)呼吸相の違いが感覚閾値強度の刺激のawarenessに与える影響についての研究を進めてきた。2)の研究では,呼吸相の違いによる痛覚関連脳電位の発生源を探索することを目的に行った。健常者15名を対象として,呼吸のタイミングで左手を表皮内電気刺激して得られた31チャンネル脳電位のsLORETA解析を行った。刺激後170-190ms(N1)と350-370ms(P1)の発生源について呼息/吸息の刺激タイミングで比較した。Cz波形でN1が出現した9例と不明瞭な6例でも比較した。その結果,N1出現の有無に関わらず両側の前帯状皮質,上・中前頭回に発生源が推定されたが出現群ではさらに前頭葉凸面の活動が認められた。P1の時間帯では,痛みに関連する前帯状皮質,島前部,眼窩前頭皮質のほか,広範な脳領域が活性化したが,特に吸息時の刺激で有意に強かった。Cz波形でのN1出現の有無には前頭葉凸面の活動の個人差が関わっているが,早期から前帯状皮質は活性化し,他の痛み関連皮質へ活動が波及する。その活動は吸息時の刺激タイミングでより大きいことが示唆された。3)の研究では,呼吸相の違いによる体性感覚誘発電位の変動を検証することを目的に行った。健常者10名を対象として,呼息時と吸息時に正中神経を電気刺激し,脳波を記録した。その結果,SEP後期成分(刺激後100~300ms)は吸息刺激に比較して呼息刺激で有意に振幅が大きかった。触圧覚など大径有髄線維を伝播する体性感覚では,息を吸うときよりも吐くときに刺激された方が前頭葉の反応は大きいことが示唆された。
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日本生体磁気学会誌
巻: 26 ページ: 58,59
臨床神経生理学
巻: 41 ページ: 71,79
巻: 41 ページ: 57,70