研究課題
運動開始時の年齢が老齢期の移動能力,そして筋と脊髄前角細胞の形態に与える影響をラットに自発走行を課すことで調べた.8~9ヶ月齢のWistar系雄性ラットを購入し,①12ヶ月齢まで運動介入を行わなかった群(12 mo SED,n = 8),②24ヶ月齢まで運動介入を行わなかった群(24 mo SED,n = 8),③22-24ヶ月齢まで回転かごによる自発走行を行わせた群(S-WR,n = 10),④12-24ヶ月齢まで自発走行を行わせた群(L-WR,n = 11)の4群に分けた.実験期間中,1日の摂取カロリーは全てのラットで揃えた.SED群について走行能力を調べるため,最期の24時間を回転カゴ内に置いた.最期の24時間において回転カゴ内でラットが走行した距離は,L-WR群では増加したがS-WR群では変化しなかった.また自発走行は最高走行速度は向上させたが,L-WR群の方がより向上していた.ヒラメ筋と長指伸筋の筋湿重量はいずれも12 mo SED群より24 mo SED群で減少していたが,これらの群の値よりS-およびL-WR群のそれは有意に重かった.S-およびL-WR群群間の値に差はなかった.腰髄前角細胞の数は12 mo SED群より24 mo SED群で低値を取ったが,L-WR群の値は24 mo SED群より多くまた12 mo SED群との間に差は見られなかった.以上より,運動介入は老齢期における筋の形態を維持改善するとともに,開始時期に依存して脊髄前角細胞の保護にも働くことが示された.そしてこれらの変化が老齢期における移動能力の改善につながったと予想された.当初の目的として,姿勢および歩行の制御に寄与しているセロトニン作動性のニューロンとその終末の加齢に伴う減少を運動介入が抑制・改善し得るのか調べることを掲げており,これについて現在分析を進めている.
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