本研究の目的は高齢者の移動の自由を保障するため、有効視野測定法を用いた簡便な運転適性評価システムを実用化することである。今年度は我々が開発した有効視野測定ソフトウェアおよびその高齢者版(以下VFIT:ブイフィットと略す:昨年実車評価との関連性を原著採択済)の信頼性を確認するため若年者、および高齢者の再テスト信頼性を約40名に実施し良好な結果を得た。また高齢者の有効視野とMMSEなどの認知機能スクリーニングには殆ど関係がなく、現状の記憶検査を中心とした高齢運転者対策は妥当でない可能性が示唆された為、その一部をInternational Psycogeriatoricsに投稿予定である。VFITは本学以外に2施設のみで活用されていたが、本年よりさらにリハビリ専門センター、大学病院および大学工学部でテスト使用中である。また、このVFITを検査だけでなく、トレーニング機器として活用するためには、使い勝手の改善が必要と考えタブレットPC版を開発した。従来版VFITとタブレットPC版はディスプレイのサイズが違うため、実施課題に工夫を行い、良好な従来版との併存妥当性、再テスト信頼性を若年者20名以上で得た。これを同様に高齢者15名で実施した結果、良好な感触であり今後対象者を増やし、いずれも自動車技術会および日本高次脳機能障害学会などで発表、論文化する計画である。また、本研究と関連の深い免許更新時の高齢者講習に関する研究をADED(米国運転リハビリ学会)でポスター発表した。これについては関係省庁と共同研究について協議し、次年度にデータの提供を受け、さらに進めた共同研究を行う計画である。またタブレットPCのような小型のディスプレイで疑似的に運転に必要な有効視野を測定する工夫を発見したため、新規特許出願を行い受理された。また、本研究に注目した高速道路関連会社との共同研究も次年度から開始する。
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