研究課題/領域番号 |
23500610
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
金子 真人 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (40448923)
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キーワード | 線画同定課題 / 視覚性注意障害 / ADHD / 視覚認知障害 / ロービジョン / ディスレクシア / 視覚失認 / MFFT |
研究概要 |
今年度は、本検査がDuPaul et al.(1992)が指摘したADHD児の示す衝動性と不注意を客観的に測定する指標となり得るかを検証する目的でADHD児の行動指標としての可能性を検討した。そして視覚性注意障害を鑑別する線画同定課題の標準化作業を行った。そのために既に収集した年長幼児を含む典型発達群(RCPM-1.5SD以上の得点を得ている)による線画同定課題の基準値を元に(年長5歳、小学1年から6年、中学生、高校生以上の10歳代、および20歳代から70歳代約600名)、項目反応分析により標準化を実施し標準線画同定課題として新たな施行を試みた。 ADHD児は都内児童精神科クリニックの協力によりADHD児29名に対して標準線画同定課題、ADHD_RSを行った。その中で、服薬中の5名を除外し、ADHD評価スケールにて75%タイル値以上の10名と、臨床評価にてADHDと判断された4名の計14名に対して典型発達群との比較を行った。検査指標は、正答数、初発反応時間およびお手つき数の3つとした。 結果は、典型発達群では、就学前から学年とともに正答数が増加し、お手つき数は学年が上がるにつれて減少した。また、初発反応時間は小学3年生頃より安定を示した。 一方、ADHD群は、典型発達群と比較して正答数が有意に低下する傾向にあった。お手つき数は同年齢の典型発達群に比べ有意に増加し、初発反応時間も有意に短くfalse alarm(お手付き反応)率が高く、正答が少なかった。 ADHDは、お手つき回数が多く不注意な傾向にあること、初発反応時間が短くよく見ない傾向にあることが示された。これはDuPaulら1992年が指摘するように、ADHDの衝動性と不注意を測定していると予測することができた。以上から線画同定課題はADHDの鑑別診断に有効な可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はADHD児などの視覚性注意障害例を対象とした研究を行ったが、比較的順調に必要となる対象児のデータを得ることができた。しかし、ADHD児のスクリーニング検査尺度化のためにはもう少しデータ数を増やすことを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、視覚性注意障害例であるADHD児の被験者数を増やし尺度化を試みるとともに、視覚認知障害例である視覚失認例のデータを収集することである。一方、ロービジョン例である弱視児者のデータは比較的順調に集まりつつあるが、弱視児童のデータを更に増やすことも必要と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
標準線画同定課題の尺度化にあたり、視覚認知障害を有する視覚失認症例のデータを収集し、線画同定課題の標準化の仕上げを行う年度である。そのためのデータ収集に研究費を使用する予定である。 また、最終の研究年度にあたるため研究のまとめを行い、日本心理学会、神経心理学会、発達性ディスレクシア研究会などで発表する予定である。また、海外への研究の動向を鑑み発表していく計画である。
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