研究課題
最終年度は、発達障害の症状分析において視覚性認知障害と視覚性注意障害の有無を簡便にかつ客観的に評価するための実証的検討を行った。日本版線画同定課題の標準化データを基に、初発反応時間(FT)とお手つきエラー数(AC)の2指標を組み合わせた反応パタンから①反応が速く正確なタイプ(FA)、②反応は速いが誤りが多いタイプ(FI)、③反応が遅く正確なタイプ(SA)、④反応が遅く、かつ誤りが多いタイプ(SI)の4つの領域特性と、対照群である定型発達群、ADHD群、視覚失認例とロービジョン例の認知特性を併せて検討した。また、特異的書字障害を含む鑑別診断の指標を作成することを目指した。定型発達児(年長児から高校生)321名、および成人例(20代から70代)370名、計691名のデータから得た標準化データを基に、ADHD群を対象に線画同定課題、ADHD評価質問紙とコンピュータによる衝動性検査(IVA)を実施し、ROC解析を行った。その結果、日本版線画同定課題は0.8の感度でADHDを鑑別し、補助的診断検査としての役割を確認することが出来た。発達性ディスレクシア群においては、初発反応時間の増減に傾向はなく、お手つきエラー数がADHD群以上に多いことから視覚性認知障害を呈している可能性が考えられた。この点については今後の検討が必要と考えられた。同様に、特異的書字障害群では初発反応時間の延長が認められると共にお手つきエラー数の増加が特徴的であった。しかしながら症例数が少なく今後の検討が求められた。今年度は上記研究に関連する結果を日本心理学会、日本神経心理学会、発達性ディスレクシア研究会、British Dyslexia Association 9th International Conferenceなどで発表した。
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