研究課題/領域番号 |
23500616
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
高橋 秀寿 杏林大学, 医学部, 准教授 (50206835)
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研究分担者 |
岡島 康友 杏林大学, 医学部, 教授 (50160669)
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キーワード | 痙縮 / 相反抑制 / 下肢装具 / 表面筋電図 |
研究概要 |
(対象) 脳梗塞、脳内出血による 片麻痺者12名(年齢47~81歳)を対象とした。また対照群として、年齢、 性別を一致させた10名の健常者を院内から募集した。 (方法) 相反抑制効果の測定は、内側腓腹筋、外側腓腹筋、ひらめ筋の筋腹中央に記録電極を貼り、腓骨神経刺激は、前脛骨筋の最小収縮を確認 し、その刺激強度の1.2倍で刺激した。電気刺激中は、被検者に軽くつま先立ちを指示し、下腿三頭筋の表面筋電を脛骨神経M波振幅の 5%程度の出力になるように促し、上記刺激を100回連続刺激して加算し、刺激後約40msec以降に生じる相反抑制効果を計測した。なお、健常者 については、腓骨神経の刺激強度を前脛骨神経の収縮閾値の強度と、相反抑制の程度を測定した。また、装具装着の有無で、相反抑制を測定した。一方、脳卒中患者については、再現性の測定のために、装具なし、あり、なし、ありの合計4回の測定を行った (結果)健常者の相反抑制は、装具の無し(61.4±18.1%)と有り(60.1±16.4%)では、危険率5%で有意差がなかった。また、刺激強度と相反抑制については、1.0倍、1.2倍、1.4倍、および1.6倍で、それぞれ、81.7%、73.6%、64.3%、59.4%で、刺激強度が強いほど、相反抑制が有意に大きいことがわかった。一方、脳卒中患者については、腓骨神経刺激強度を閾値の1.2倍に統一して行った。結果は、相反抑制は、装具無し(1回目83.7%、2回目81.9%)と比較して、装具有り(1回目69.0%、2回目71.0%)では、危険率5%で有意差に低下(相反抑制は増加)していた。 また、痙縮の程度(modified Ashworth scale)が強いほど、相反抑制が小さいことが分かった(p<0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者の相反抑制は、拮抗禁の刺激強度が1.0倍から1.6倍で、大きいければほど、大きくなることがわかった。また、健常者の相反抑制は、装具の無しと有りでは、危険率5%で有意差がなかった。一方、脳卒中患者の相反抑制は、装具無しと比較して、装具有りでは、危険率5%で有意差に増加していた。また、測定値の再現性についても証明された。この結果は、研究計画当初の予想通り、痙縮の原因の一つとして、作動筋と拮抗筋の相反抑制の障害が関与していることを証明する結果となった。 また、痙縮の程度(modified Ashworth scale)が強いほど、相反抑制が小さくなることが証明されたことで、今回の筋電図による定量的測定方法の妥当性が証明された。
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今後の研究の推進方策 |
痙縮の評価法として、F波の測定による装具の痙縮抑制効果の解析を行う。 研究調査対象は発症後24時間以内に入院し、立位保持が可能で下腿三頭筋に随意収縮が認められる急性期の脳梗塞、脳内出血による痙性片麻痺者10名を対象とする。また対照群として、年齢、 性別を一致させた10名の健常者を院内から募集する。調査方法は本研究に対する同意の得られた被検者に対して、筋電図検査の直前に、関節可動域(特に足関節)、片麻痺の重症度(SIAS-m)、知覚障害(SIAS-s)、痙縮(m-AS)を測定する。F波の測定方法は、被検者の脛骨神経を膝部で20回最大上刺激し、下腿三頭筋の表面電極で誘発電位を測定する。そして、直接刺激による誘発電位として“M波”を記録する。また、その刺激が中枢方向に伝播し、脊髄前角の運動ニューロンに達し、その刺激は正常では運動ニューロンの1%を興奮させ、これが下腿三頭筋に伝わる。これが“F波”である。得られた波形について、脛骨神経F波の平均振幅をM波振幅の比率で表して定量化する。この測定法を用いて、今回開発した装具の使用の有無で、痙縮抑制効果を比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
統計処理に必要なソフトの購入、研究助手に対する人件費、および電極などの消耗品、さらに研究成果の発表のための旅費に用いる予定である。
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