(目的)脳卒中患者の痙縮の亢進は、その後のリハビリを行う上で非常に重要である。今回、痙縮抑制を目的とした足底装具を考案し、急性期の脳卒中患者に対する効果を検証した。 (対象) 脳梗塞、脳内出血による 発症1ヶ月以内の片麻痺者17名(年齢47~81歳)を対象とした。また対照群として、年齢、 性別を一致させた10名 の健常者を院内から募集した。 (方法)足底装具はMP関節部分を除圧し、前足部、土踏まず、および踵部で接地する用にデザインした。痙縮抑制の効果判定は筋電図を用いて、内側腓腹筋、外側腓腹筋、ひらめ筋の筋腹中央に記録電極を貼り、腓骨神経刺激は、前脛骨筋の 最小収縮を確認 し、その刺激強度の1.2倍で刺激した。電気刺激中は、被検者に両側足底の荷重を指示し、膝を軽度屈曲させ、下腿三頭筋の表面筋電を脛骨神経M波振幅の5%程度の出力になるように促し、上記刺激を100回連続刺激して加算し、刺激後約40msec以降に生じる相反抑制効果を計測した。なお、再現性の測定のために、装具なし、あり、なし、ありの合計4回の測定を行った (結果)健常者の相反抑制は、装具の無し(61.4±18.1%)と有り(60.1±16.4%)では、危険率5%で有意差がなかった。一方、脳卒中患者については、腓骨神経刺激強度を閾値の1.2倍に統一して行った。結果 は、相反抑制は、装具無し(1回目83.7%、2回目81.9%)と比較して、装具有り(1回目69.0%、2回目71.0%)では、危険率5%で有意差 に低下(相反抑制は増加)していた。 また、痙縮の程度(modified Ashworth scale)が強いほど、相反抑制が小さいことが分かった(p <0.05)。 (結論)脳卒中急性期の患者に対して、今回考案した痙縮抑制目的の足底装具は、痙縮によって抑制されていた足関節背屈筋群からの相反抑制を,元の状態に改善する効果があることがわかった。
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