研究課題/領域番号 |
23500618
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辻 哲也 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (90245639)
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キーワード | リンパ浮腫 / 評価法 / 計量心理学的特性 / 子宮癌 / 卵巣癌 / 婦人科癌 / QOL |
研究概要 |
本研究の目的は、下肢リンパ浮腫患者を対象に、非接触3次元デジタイザ(VIVID 910、コニカ・ミノルタ社製、日本)、赤外線スキャン(Perometer550T、Pero-System社製、ドイツ)、水置換法(自作)および巻尺を用いて下肢体積および周径を計測し、個々の評価機器の計量心理学的特性を検証することである。研究デザインは非介入型臨床研究、対象は健常者・婦人科癌術後の二次性下肢リンパ浮腫患者である。 立位姿勢でVIVID・Perometerを用いた下肢の体積測定・巻尺を用いた下肢周径の計測を30分以内に2回測定を繰り返し、その後、水置換法による体積測定を1回行った。VIVIDでは下肢を6方向から撮影し3D画像化し、計測ソフトにより体積および下肢周径を算出した。Perometerでは赤外線によるスキャンを行い画像化、計測ソフトにより体積および下肢周径を算出した。 平成24年度は、健常者14名において巻き尺、VIVIDおよび水置換法の信頼性・妥当性の検討を実施した。結果、巻尺およびPerometerによる周径計測の級内相関係数(ICC)はいずれの部位でも0.9以上であった。VIVIDによる周径計測のICCは0.4から0.7とばらつきがみられた。Perometer・VIVIDによる体積計測のICCは両者とも0.8であった。巻尺とPerometerによる周径計測との間の相関係数はいずれの部位でも0.8以上、巻尺とVIVIDによる周径計測の相関係数は各部位において0.4~0.6であった。水置換法とPerometerによる体積計測との間の相関係数は0.7、水置換法とVIVIDによる体積計測の相関係数は0.6であった。 Perometer・VIVID910は測定方法や解析に関して多くの利点がある。まだ改善の余地はあるが代替手段として有効な評価法となりうる。今後さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤外線スキャン(Perometer550T、Pero-System社製、ドイツ)および非接触3次元デジタイザ(VIVID 910、コニカ・ミノルタ社製、日本)は初期不良やソフトウエアの不具合等もなく、計測は順調に行えている。自作した水置換法の使い勝手も問題ない。 平成23年度には、健常者10名を対象に、巻き尺、VIVID 910および水置換法に関しては健常者10名での先行研究を実施し、良好な信頼性・妥当性を得られた。 平成24年度は、慶應義塾大学医学部倫理審査申請書を作成、倫理委員会において倫理審査を受け遅滞なく承認された。その後、健常者14名を対象に、巻き尺、VIVID 910、水置換法とともに、Perometer550Tを使用して、当初の計画どおりに研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、婦人科術後の二次性リンパ浮腫患者のエントリーし、非接触3次元デジタイザ(VIVID 910、コニカ・ミノルタ社製、日本)、赤外線スキャン(Perometer550T、Pero-System社製、ドイツ)、水置換法(自作)および巻尺を用いて下肢体積および周径を計測を行う。また、随時、結果の解析を行う。 信頼性(再現性)の評価に関しては、立位姿勢で、非接触3次元デジタイザおよび赤外線スキャンを用いた下肢の体積測定および巻尺を用いた下肢周径の計測を行う。30分以内に2回測定を繰り返し、測定した値について級内相関係数(ICC)を求める。 妥当性の評価に関しては、巻尺を用いた下肢周径の計測、非接触3次元デジタイザによる同一部位の周径の測定値との相関係数を求める。非接触3次元デジタイザ、赤外線スキャンおよび水置換法による下肢体積の測定との相関係数を求める。また、背景因子や浮腫の重症度およびリンパ浮腫治療による浮腫の改善度と各評価機器による下肢体積や周径値と背景因子やリンパ浮腫の重症度等との関係を分析し、成果をまとめる。個々の評価機器の計量心理学的特性(信頼性、併存的妥当性)の検証結果をふまえて、臨床業務・研究における使用指針を作成するし、学会発表および論文として公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
リンパ浮腫患者の診察・評価のため、筋力計測機器(ハンドダイナモメーター)を購入、データ収集・分析のため、ソフトウエア、記録媒体、消耗品等を購入する。学会発表のための経費(渡航費など)として使用する。 また24年度の未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、25年度の消耗品(文房具、記録媒体、ソフトウエア)の購入に充てる予定である。
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