研究課題
本研究の目的は、体重の約50%を占める骨格筋の炎症制御という新たな視点から、マクロファージサブセットと骨格筋の急性や慢性炎症との関連を、培養系や動脈硬化モデルマウスを用いて基礎的に検討することである。本年度は、1.骨格筋の炎症におけるM1およびM2の役割を検討するため、ヒト末梢血単球からM-CSF刺激によりM0に分化させ、LPS+IFN-gamma またはIL-4刺激によりそれぞれM1、M2に分化誘導させた。さらに、それぞれを酸化LDLにより刺激した。酸化LDL刺激前後で、発現上昇の強い遺伝子はM0とM2で類似していた。分子ネットワーク解析では、刺激前後で最も変動するネットワーク群がM1で認められ、そこに含まれる分子すべてが直接または間接的にTGF-βによる細胞応答に関与していた。階層的クラスター解析では、M1においてのみ強く上昇する遺伝子にはNF-κBのシグナル伝達経路に関与する遺伝子が含まれていた。RT-PCR解析では、M2における酸化LDL刺激後のIL-8発現がM0やM1に比較して有意に低値であった。以上より、酸化LDL刺激下で、M1マクロファージはM2に比べ、より特徴的な反応を示す可能性が示唆された。2.生後8週雄のアポE欠損マウスに高脂肪食負荷を行い、動脈硬化モデルマウスを作製し、4群(普通食群、高脂肪食群、自発的運動療法群、強制的運動療法群)に分割し、自発運動と強制運動との比較を行った。自発的運動療法群と強制的運動療法群における大動脈弁輪部や大動脈展開標本上の動脈硬化面積は、高脂肪食群に比較して有意に抑制されていた。現在、骨格筋の組織染色および遺伝子発現、血管内皮機能等を検討中である3.さらに、国内外の学会に参加して、国内外の研究者と意見交換を行った。
2: おおむね順調に進展している
M0/M1/M2の分化誘導やDNAチップ解析、動脈硬化モデルマウスを用いた実験系はすでに確立し、解析も進行している。
M0/M1/M2と骨格筋細胞との共培養を行い、平成23年度と同様の超高感度DNAチップによる解析を行い、新規マーカーの検討を行う。自発的運動療法群と強制的運動療法群における骨格筋の組織染色および遺伝子発現、血管内皮機能等の検討を継続する。
細胞培養のための試薬、DNAチップによる解析関連費用、動物モデル解析のための各種抗体や試薬、学会発表や情報交換のための参加費旅費に使用する計画である。
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