研究課題/領域番号 |
23500621
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
北野 庸子 東海大学, 健康科学部, 教授 (50276862)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 難聴乳幼児 / 人工内耳 / 新生児聴覚スクリーニング / 遺伝子診断 / 母子関係 / 前言語発達 / 言語獲得 / 難聴児の子育て |
研究概要 |
本研究の目的は、近年の難聴医療・医療工学の発展で、難聴の早期発見と、人工内耳という良好な補聴器機を装用することで、重度の聴覚障害をもつ難聴乳幼児は、今までには考えられなかったような聴取能力を、しかも早期から獲得することができるようになった。このような早期介入が、難聴乳幼児と聞こえる母親(親)との関係をどのように促進できるのかを明らかにすることが本研究の目的である。この目的にそって、2011年度には、5症例の難聴乳児と母親との母子関係(遊び場面)のデータ(人工内耳装用前と人工内耳装用後)、ならびにコントロールグループとして聞こえる乳幼児と母親との関係(遊び場面)を、継続的に撮影を重ねた。このデータを、現在作成中の分析基準に基づいて、今年度、分析を開始する計画である。現在の観察では、人工内耳を装用することで、母子関係が著しく変化することが観察されている(例、視線が合いやすくなる、母親に向かって発声が増える、母親の動きを模倣するなど)。このような変化は聞こえる乳幼児が母親との関係で見せる動きと類似していることから、人工内耳の早期装用が、母子関係の質を変えていることは、これからのデータ分析からのエビデンスに基づいて証明することができると考える。 また昨年度末には、主研究者(北野)は、アメリカの聴覚に基づく教育を長年行ってきたClarke School for Hearing and Speech を訪れ、ここで乳幼児と母子関係の研究や指導を行っているDr.Gattyと意見交換をすることができた。アメリカは人工内耳の導入が日本より10年先に行われたことから、実践的、研究的に多くの示唆があり、残り2年間の研究の指針を得ることができた。以上、第一年目の本研究は、データ収集が中心となったが、その中でも研究目的の適切性と結果の見通しを得ることができた1年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が概ね順調に進展していると言えるのは、難聴乳幼児の母子関係のデータと聞こえる乳幼児の母子関係のダータが、それぞれその領域の研究を専門とし、沢山の症例を持っている研究者によって順調に集められていることによる。乳幼児のデータは乳幼児を対象とすることから、体調や気分が悪いと良質なデータが取れないが、この点は本研究では問題となっていない。昨年度、このように大量に集められたデータを今年度に整理し、分析することが本研究の研究計画であったので、概ね計画通りと考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に購入した「行動コーディング解析ソフト」が予定していた金額よりも低価格で購入できたこと。母子関係のデータ収集に協力者がスムースに得られことなどから、昨年度には約50万円の助成金が残った。本年度はこの助成金を使って、本研究のデータ分析に関して、海外の研究者との研究交流を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は約40万円の助成金をいただくことに成っている。本研究には2名の研究協力者が参加し、今まではそれぞれの領域でデータを収集してきた。今年度は、データ分析に入ることから、研究者間での話し合いが研究プロセスの大きな位置を占めることになる。そのため、研究者の移動のための交通費、会合のための経費、並びに関連学会への参加費用などの経費として使用させて頂く予定である。
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