研究課題/領域番号 |
23500627
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
太田 喜久夫 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (00246034)
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研究分担者 |
田辺 茂雄 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (50398632)
加賀谷 斉 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (40282181)
才藤 栄一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (50162186)
岡田 澄子 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (10387673)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バルーン型センサー / 嚥下圧 / リハビリテーション |
研究概要 |
平成23年度に実施した研究は、バルーン型嚥下圧センサーを開発し、嚥下時に食塊にかかる圧力を継時的に測定できるようにすることと、開発した嚥下圧センサーの信頼性と安全性を検証する事である。これまでの嚥下時咽頭内圧の測定は圧トランスデューサーを用いたもので、センサーが存在する部分での1方向性の圧力測定であり、食塊そのものに加わる圧力を継時的にとらえた測定法はなかった。バルーン型圧力センサーを嚥下し、その内圧を継時的に測定できるシステムを開発することによって、これまで未解決であった食塊に加わる嚥下時の圧力を連続的に測定することが可能である。このバルーン型嚥下圧測定システムが完成すれば、嚥下障害患者のメカニズムを従来のマノメトリーでの嚥下圧測定よりも簡便に測定が可能となるだけでなく、嚥下訓練手技の開発につながると思われる。平成23年度では、このような目的でバルーン型嚥下圧センサーの開発を実施し、開発したバルーン型嚥下圧センサーの安全性と精度を検証した。研究概要 JMS型舌圧測定器を改良し、バルーン型嚥下圧センサーを開発した。安全性の検討:バルーン型嚥下圧センサーと連結管に500g重づつ牽引力を増加させ破断するまで牽引を実施した。精度測定:マノメトリーのセンサーと開発したバルーンセンサーに同時に10kPaづつ圧力を加え、200kPaまで20ポイントで測定し、一致率を検討した。【結果】開発したバルーンと連結管は2kg重までの牽引力では10本全て破断しなかった。精度の検討では、マノメトリーとの20ポイントでの圧力比較でr= 0.96であった。開発したバルーン型嚥下圧センサーは、2kg重の力が働いても破断すること無く一定の安全性が得られた。また、精度は従来のマノメトリーと同様良好であり、バルーンに加わる嚥下圧の測定に有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、10Frの膀胱留置カテーテルを用いてバルーンに加わる圧力を測定するセンサーの開発に着手した。当初は嚥下障害患者のバルーン拡張訓練で使用される膀胱留置カテーテルをもとにバルーン内圧測定装置を開発する予定であったが、バルーンの収縮力が高く圧トランスデューサーとの連結が困難であった。そのため、バルーン型舌圧測定器のセンサーに着目し、市販されているJMS舌圧測定器を改良することによってバルーン型嚥下圧センサーを作成する事が可能となった。 開発されたバルーン型嚥下圧センサーは、嚥下内視鏡を利用して観察しながらであれば容易に梨状窩まで到達し、嚥下する事が可能である。検者を対象としたバルーン型嚥下圧センサーの嚥下圧は通常のマノメトリー測定装置による結果と同等の最大嚥下圧を測定することが可能であった。また、安全性と精度の検討が実施され、牽引2kgでもセンサーの破談がないことを確認し、安全性について検証ができた点こと、マノメトリー(Monoscan)との圧力比較では、精度も良好である事が確認できた。 以上のように平成23年度に予定されていた、バルーン型嚥下圧測定装置の試作品が完成し、その安全性と精度を確認できた点で、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。今後は、さらに倫理委員会へ申請して許可が得られた後、このバルーン型嚥下圧測定装置の妥当性や信頼性の検証をすすめ、嚥下障害患者の嚥下動態の評価とそれにもとづく訓練手技の開発研究につなげる事ができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
安全性を確認した上で、倫理委員会に妥当性と信頼性の確立についての研究を申請する。平成24年度に倫理委員会に提出後は、健常者および嚥下障害者を対象として、バルーン型嚥下圧測定装置による計測を実施する予定である。 まず、健常者を対象として嚥下内視鏡を用いてバルーン型嚥下圧測定センサーを下部咽頭に留置し、同時にマノメトリ-を径鼻で咽頭から食道まで留置し、その後バルーン型センサーを嚥下することによって経時的に嚥下圧を測定する。得られた測定値はコンピューターに取り込まれ、リアルタイムで圧変化をグラフで表示できるシステムを開発する。 さらに嚥下障害患者には、嚥下造影検査や4D-CT検査を用いてバルーン型嚥下圧測定センサーの嚥下圧測定時の嚥下動態を観察し、得られた画像をビデオ画像として撮像しコンピューターにとりこみ、嚥下障害のメカニズムについて詳細に評価する。 また、安全性と信頼性を確立した上で、平成25年度には嚥下障害患者に向けた嚥下圧測定と嚥下手技の開発にむけた研究に着手し、嚥下手技の適応やその訓練効果の判定にこのバルーン型嚥下圧測定装置が有用であるかを検討する。用いる嚥下手技としては、メンデルゾーン法、喉頭閉鎖嚥下法、声門閉鎖嚥下法、努力性嚥下法、バルーン拡張法などを予定している。さらにその成果を平成25年度の日本摂食・嚥下リハビリテーション学会およびアメリカ合衆国での国際嚥下学会(Dysphagia Research Society)に発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として平成23年度から繰り越された158,650円は、JMS舌圧測定装置の購入に利用し、2台で効率的に測定が可能となるように実施する予定である。また、24年度の直接経費400,000円は、測定に使用する消耗品の費用(デジタルビデオテープ、DVD-Rメディア、記録用ハードディスク、JMS舌圧測定器専用舌圧プローブ、舌圧測定器専用連結チューブ)と、研究成果の発表に当てる予定である。 平成23年度および平成24年度の成果を平成24年度日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会(札幌)、アメリカ合衆国での国際嚥下学会(Dysphagia Research Society)(シアトル)で発表する予定である。
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