研究課題/領域番号 |
23500630
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
森岡 周 畿央大学, 健康科学部, 教授 (20388903)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ニューロフィードバック / 脳活動 / イメージ / NIRS / EEG |
研究概要 |
目的:健康な成人を対象にNIRS-EEGシステムを用いて、道具操作およびそのイメージ想起に関わる脳活動を空間的かつ時間的に分析し責任領域を明確にすること。対象:健康な20代~30代の成人13名(男性7名 女性6名)。方法:道具は箸とハンマーを用い、それを使用している映像を作成した。被験者は以下の3条件にて脳活動が測定された。1)道具使用時、2)道具使用のイメージ時、3)道具使用の映像観察時。脳活動測定には脳波計Active Two system (Biosemi)と近赤外線スペクトロスコピー FOIRE 3000(fNIRS 島津製作所)を同期して用いた。各々15秒間の脳活動を測定した。前頭葉と頭頂葉を覆うようにファイバならびに電極を取り付けた。EMSE 脳波解析プログラム、MRIフュージョンソフトウェア、 NIRS-SPMを用いて解析した。脳波解析は国際10-20法に準拠し事象に関連したC3・Cz・C4(感覚運動野領域)のα波帯域(8-13Hz)のパワー値を求めた。一方NIRSはSPM解析を行い、責任領域を明らかにした。結果:3条件間にて感覚運動野領域のα周波数帯域のパワー値に有意な差が認められなかった。NIRS-SPM解析においては、3条件で安静時に比較して運動関連領野の有意な酸素化ヘモグロビン濃度長の増加が認められた(p<0.01)。特に運動前野の活動が明確であった。結論:これらの結果により道具操作時、イメージ時、観察時の感覚運動野の活動が等価的であることが判明した.またNIRS-SPM解析によって3条件ともに運動関連領野を活性化させることが明らかになった。この結果は運動実行を伴わないイメージや観察においても運動関連領野を活性化させることを示唆した。こうしたデータを標準としてニューロフィードバック装置の開発につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむねデータ解析は順調に進んでいるが、研究費の交付が遅れたことから、被験者のリクルート開始が遅れ、そのため当初予定した母集団とはなっていない。速やかに予定した母集団にする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、昨年度のデータ測定を継続し、母集団が相当数となった時点で得られた脳活動をもとにニューロフィードバック装置の開発を行う。その実際は、上肢到達運動および手把握操作運動とそれをイメージ想起した時のNIRSデータから、空間的に有意性のあるチャンネルについてGLM統計ソフトウェア(島津製作所製)を用いて抽出し、t値マッピング表示を行う。運動およびイメージ想起の両方において有意性を示した領域を同定し、標準的な活動量を算出する。この標準的活動量をもとにNIRS装置と同期化した聴覚的フィードバック装置を製作する。具体的には。前年度に作成した映像を観察しながらイメージ想起を行っている際に、上肢運動に関わる感覚運動野および運動前野の活動が標準的活動量に達した場合に外部フィードバックが対象者に付与されるシステムである。外部フィードバックは聴覚および視覚とし、運動前野の活動を反映したフィードバックを聴覚、感覚運動野の活動を反映したフィードバックを視覚とし、それらフィードバックを用いて対象者に知らせるニューロフィードバックシステムを開発する。なお、これらのニューロフィードバック装置の開発・製作は (株)島津製作所の石川亮宏氏の協力により進めて行く。また、データ採取には筆者が主宰する研究室の大学院生が前年度同様に協力する。以上の手続きにおいて、ニューロフィードバック装置の精度を調べる目的で、計測者がリアルタイムに課題中の対象者の脳活動を確認する。これには,NIRSリアルタイムデータ転送ソフトウェア(島津製作所)を用いて、脳マッピング画像をもとに脳活動の確認を行い、フィードバック付与のタイミングと脳活動が一致しているかについて調べるつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、データ採取に関わる謝金、人件費、そのデータを分析するためのNIRS-EEGシステムに関連した備品、消耗品、また得られたデータを公表するための学会旅費、論文投稿費、さらにはニューロフィードバック装置開発のための技術に関わる一連の費用(専門的知識の提供、会議費、印刷費、機器製作費など)が必要になる。
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