研究課題/領域番号 |
23500633
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
岡崎 哲也 産業医科大学, 医学部, 講師 (40352314)
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研究分担者 |
蜂須賀 研二 産業医科大学, 医学部, 教授 (00129602)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 反復経頭蓋磁気刺激 / 近赤外分光法 / 失語症 |
研究概要 |
本研究は失語症を有する慢性期脳卒中患者を対象に無作為割りつけを行い反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Trans Magnetic Stimulation; rTMS)による失語症の改善効果を評価者の盲検化のもとで前向きに検証すること,および近赤外分光法(near-infrared spectroscopy;NIRS)の手法を用いて磁気刺激が脳活動に与える影響,rTMS治療期間前後における言語課題遂行中の脳活動パターンの変化について客観的に評価することを目的とする.各々についての本年度の成果を以下に述べる.(1)rTMSによる失語症の改善効果について:運動優位型失語症患者3症例(A,B,C)においていずれもrTMSを有害事象なく施行できた.介護者の観察では症例Aではフリートークでの発話量増加,症例Bでは喚語困難やジャルゴンの減少に伴い電話を通しての発語が理解しやすくなったなどの改善を認めた.喚語困難の評価として標準失語症検査に加えてrTMS前後に施行した100語テストの正答率は症例A (前)82%→(後)85%,症例B(前) 71%→(後)68%,症例C (前)41%→(後)38%であった.(2)光トポグラフィ装置(ETG-100,日立メディコ)を用いた言語野活動評価について:失語症患者の評価の前に健常者における試験的研究を行い,言語野活動の側性化指数を求めることができた.(1)で述べた3症例においてrTMS治療期間前後における言語課題遂行中の脳活動パターンについて明らかな変化をとらえることはできなかった.設定した言語課題と失語症重症度との適合が不十分であった可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の対象は運動性失語を有する慢性期脳血管障害患者である.なかでも,臨床的改善を課題成績向上として客観的に示すためには語想起課題や呼称課題などで天井効果や床効果を認めない程度の重症度である必要がある.本年度研究の対象症例の失語症状は望ましい程度よりも重症に偏る傾向にあったと考えられる.光トポグラフィ装置を用いた言語野活動評価について,健常者を対象とした予備的研究を参考としながら,対象が失語症患者であることをふまえての言語課題設定を行った.しかし,予想よりも相対的に課題の難易度が高かった印象があり,適切な言語活動を促せなかったおそれがある.
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今後の研究の推進方策 |
研究参加を呼びかける広報範囲を広げ,かつ十分な診察によって本研究の目的に沿った対象者を確保する.また,光トポグラフィ装置を用いた言語野活動評価について,類似した手法をとる研究施設との情報交換を行いながら研究を継続する.
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次年度の研究費の使用計画 |
光トポグラフィ装置(ETG-100,日立メディコ)のリース料金,旅費(研究打ち合わせ,成果発表)などを計画している.
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