研究概要 |
両耳聴補聴器において、被験者の相手の話者が発話中に、視覚情報のタイミングから処理よる遅れを伴って聴覚音声情報が耳に入る。本研究では、このような視聴覚の時間的非同期の刺激が与えられる条件下で,両耳補聴システムの主観的性能評価を行い,両耳補聴システムの実現上具備すべき要件を明らかにしていくことを目的とする. 特に,本研究代表者がこれまで提案してきたTS-BASEシステムおよび理想的な補聴システムを想定した場合について,主観的な性能評価,主観的な定位感評価,視聴覚相互作用による補聴システムの遅れ時間の影響,の観点にたち,了解度性能評価実験を行った. まず、話者映像から音声の遅れ時間を徐々に変化させ、それぞれの音声がどの程度認識可能であるかの実験を行った。発話単語リストは、50音の統制と親密度の制御がとれている東北大の坂本らが提案しているFW03を用いた。このリストを発話の訓練を受けたアマチュアアナウンサに発話させ、これを映像として録画、同時に高性能コンデンサマイクロホンで発話音声も収録した。このとき、音声はリニアPCM44.1kHzで収録し、収録条件による認知の影響はでないようにしている。その後、発話刺激を作成し、0ms,10ms,20ms,50ms,100ms,200ms,300ms,400msの遅れを与えたリストを準備した。これを聴覚健常な男女6名の被験者に提示し、どの程度の音声了解度が得られるか確かめた。なお、了解度のバランスを得るために、同時にホワイトノイズを提示している。 結果として、まず、音声了解度は、時間遅れが100msを超える付近から低下しはじめ、300msを超えた時には、視覚情報は音声認知を補助しないことが明らかとなった。また、子音と母音の認識率の差を調べたところ、圧倒的に子音の認識率が低下しており、時間遅れにより認識低下が起こりやすい部分が明らかとなった。
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