研究課題
今年度は、当初掲げた具体的な研究項目のうちの、「小脳核細胞におけるシナプス可塑性の神経機構の解明」について、最終的に論文を投稿するまでに至った。運動学習において、小脳皮質での平行線維‐プルキンエ細胞シナプスにおける長期抑圧(LTD)は短期記憶に、深部にある小脳核(もしくは前庭核)での苔状線維‐小脳核細胞シナプスにおける長期増強(LTP)は長期記憶の形成に関与していると考えられている。ロータロッド運動試験や眼球反射(前庭動眼反射や視機性眼球反応)のテストにおいて、長期の運動学習が障害されるモデルマウスを用い、小脳プルキンエ細胞の軸索終末におけるGABA放出機構の周波数特性や頻度依存性(小胞のリサイクリング)について検証した。リガンドがまだ確定していない代謝型受容体の一つであるGPRC5BのKOマウスの急性小脳スライス標本にパッチクランプ法を適用し、小脳皮質白質路を電気的に刺激に、放出確率・paired-pulse ratioを算出し、さらにreadily releasable poolを概算した。その結果生後14-18日齢では、プルキンエ細胞軸索終末におけるGABA放出機構には差が見られなかった。次に苔状線維‐小脳核細胞シナプスにおけるシナプス可塑性、長期増強(LTP)について検証した結果、小脳核細胞の細胞膜興奮性や高頻度刺激時の細胞内カルシウム濃度上昇に変化は見られないにもかかわらず、KOマウスではLTPの幅が有意に抑制された。この結果から、運動の固定化である小脳核での長期記憶の形成に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。
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