研究課題/領域番号 |
23500639
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
三ツ井 貴夫 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (80294726)
|
キーワード | パーキンソン病 / リハビリテーション / 神経難病 |
研究概要 |
リハビリテーション医療は、現在、多くの専門部門からなる多職種のスタッフが参画するチームアプローチとして、日常的に広く行われている。現在のリハビリテーションの進め方は,Dsability-oriented rehabiritationということができる。すなわち、基本的には運動機能を評価することからスタートし、その劣った機能を集中的に強化することを重視するものであり、急性に発症する疾患に対しては非常に有効である。しかし、緩徐進行性の神経変性疾患においては,十分な効果の検討はなされていない。とりわけ、精神的ストレスの影響が強いパーキンソン病においては効果は限定的といえる。本研究は,我々がパーキンソン病のために独自に作成したリハビリ専用のプログラム (Mentality-oriented rehabilitation) の、種々の神経難病に対する効果を様々な角度から検討する。 国立病院機構徳島病院においては、パーキンソン病を対象として平成21年5月より専門的リハビリテーションがスタートしている。パーキンソン病に対しては、このリハビリテーションは運動症状・非運動症状ともに著明な改善が得られている。本研究ではさらに他のパーキンソン病関連疾患や多系統萎縮症の患者に対しても行い、その効果がどの程度あるのかを様々な評価スケールを用いて検定する。また、このリハビリテーションがそれぞれの疾患に対してどの程度効果があるのか、さらには効果がある場合にはいつまで持続するかを検討する。コントロールとしては、外来通院で従来の方法でリハビリを受けている同じ疾患の患者を同様のスケールで評価する。これまでにパーキンソン病ならびにパーキンソン病関連疾患にについてリハビリテーションを行い、以下に述べるように、運動機能ならびに精神機能の改善が得られている。 (
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は主として孤発性パーキンソン病の患者を対象にして、リハビリテーションを実施した。パーキンソン病患者に関しては、入院時に伴う非運動症状の評価、服用している抗パーキンソン病薬の副作用の有無についても評価する。またレボドーパを内服し ている患者については、必要に応じて、血中のレボドーパ濃度の測定を行い、必要最小限の抗パーキンソン病薬を内服するよう調整を試みた。 平成24年度にはパーキンソン病とともに進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症や、多系統萎縮症の患者について、同様のリハビリテーションを行い、その効果を検証する。コントロールには外来通院および在宅で通常のリハビリ(Disability-orientated Rehabilitation)を実施している同様の神経疾患の患者を用いる。コントロールにもリハビリの開始6ヶ月間は薬物療法に変更がなされていない患者を対象とした。 リハビリテーションの効果を1年間にわたり追跡し、これらの患者について、神経内科専門医、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)および言語聴覚士(ST)がそれぞれ次のスケールを用いて実施した。神経内科医: UPDRS part 1-4 理学療法士(PT) ①歩行: スピード、歩幅、歩数 ②筋力: 大腿四頭筋(左右)作業療法士(OT) ①握力(左右) ②STEF ③SDS ④IADL ⑤ADL(BI)言語聴覚士(ST) ①FAB ②MMSE ③口唇運動: 開口「あ」、横引「い」、突出「う」④舌運動:突出、右、左 ⑤咬合力 ⑥両唇閉鎖力 ⑦嚥下:反復唾液飲みテスト、改定水飲みテスト ⑧発声 持続「あー」、早口「ぱ」、「た」、「か」、「ぱたか」 これらの評価は入院前、入院後4週間、退院後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年の時点で行った。
|
今後の研究の推進方策 |
徳島病院でリハビリテーション入院をされた患者は平成21年には49名であった。本研究費助成をうけてからリハビリテーション入院を行ったパーキンソン病ならびにパーキンソン病関連疾患患者は、平成22年度は95名、平成23年は106名、平成24年は119名であった。この3年間の合計は320名となる。 本研究は、我々の考案したリハビリテーションをパーキンソン病関連疾患や多系統萎縮症に対しての効果を短期・長期間にわたり検証するものであり、その成果は種々の媒体を通じて社会・国民に発信する予定である。成果の発表に関しては平成23年度には和 文総説1編、平成24年度にも和文総説1編の発表を学術誌に行った。さらに、これまでに得られた成績は第53回日本神経学会学術大会(平成24年5月22日-25日)において4題の演題の発表を行った(有井敬治、川村和之、谷口百合、水田理沙)。第54回日本神経学会学術大会(平成25年5月29日-6月1日)においては5題の演題の発表を予定している(有井敬治、川村和之、谷口百合、宮田七、水田理沙)。また、第66回国立病院総合医学会(平成24年11月16日-17日)には9題の演題の発表をおこなった。平成25年度(平成25年11月8日ー9日)には6題の演題の発表を予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記の通り、第54回日本神経学会学術大会(平成25年5月29日-6月1日)においては5題の演題の発表を予定している(有井敬治、川村和之、谷口百合、宮田七、水田理沙)。また、平成25年度(平成25年11月8日ー9日)には6題の演題の発表を予定している。これらの発表の際の旅費等に研究費の使用を予定している。 また3年間で若年性パーキンソン病の患者は15名が入院し、うち8名にパーキン遺伝子の欠損が認められた。パ-キン遺伝子欠損症は孤発性パーキンソン病とは若干に症状が異なることから、異なったリハビリテーションのアプローチが必要であり、平成25年度も家族性パーキンソン病の遺伝子検索を行っていく予定である。
|