研究課題/領域番号 |
23500641
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
巖見 武裕 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10259806)
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研究分担者 |
平元 和彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00261652)
宮脇 和人 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00390906)
佐々木 誠 岩手大学, 工学部, 助教 (80404119)
島田 洋一 秋田大学, 医学部, 教授 (90162685)
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キーワード | 座位バランス / 転倒防止 / 高齢者 / バイオメカニクス / 動作解析 |
研究概要 |
本研究では安全な座位姿勢を用い,外乱で崩れた姿勢をリカバリーする総合的な身体能力を評価できる装置を開発した.本システムでは,姿勢を崩す外乱として座面の角度を変動させる.そして,そのときの身体運動と座面反力ベクトルを計測することで,従来の圧力中心点の軌跡の評価に加えて身体重心や姿勢の変動,脊椎などの関節トルクの評価を行うことができる.さらに,外乱に対する身体運動時の反応時間の遅れを定量的に評価するなど,新たな観点からのバランス評価を行った. 本年度は,昨年度に製作した座位バランス計測装置により座面を傾斜させる反復運動を行い,新たに男女66名(15-85歳)の身体運動を計測した.このとき,45歳以下を若年者,65歳以上を高齢者と定義して2群に分け,若年者群は33名(男性14名,女性19名,平均年齢27.5歳),高齢者群は33名(男性14名,女性19名,平均年齢76.4歳)とした.その結果,これまでに実績のある立位の重心動揺から評価したバランス能力と,本研究で座位から評価したバランス能力には正の相関が確認された. また,昨年度に製作した座位バランス計測装置は,座面傾斜角度を変更出来ない構造であったが,本年度は新たに座面傾斜角度を任意に変更できる機構と,身体運動を3次元計測できる機械式モーションキャプチャ装置を製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した動的座位バランス評価装置の有効性を検証するために,秋田大学医学部および県内の高齢者施設において臨床実験を実施し,外乱刺激に対するバランス能力評価実験を実施した.本年度は新たに66名の若年者と高齢者に対してバランス能力を評価した.その結果,高齢者は,外乱に伴う身体動揺とCOPの変動が有意に大きく,座面傾斜に対して姿勢を維持できずに身体を振られていることがわかった.また,固有受容器の微細な姿勢制御機能が劣り,座面変動に対する反応も遅いことから,姿勢保持のためにより大きな体幹の筋力(関節トルク)を必要としていることが示された.また、これまでに実績のある立位の重心動揺から評価したバランス能力と,本研究で座位から評価したバランス能力には正の相関が確認されるなど,順調に基礎データを蓄積している. 本研究にて得られたこれらの結果は,国内の医学系学術講演会(日本リハビリテーション医学会学術集会,日本脊髄障害医学会学術集会)において公表した.また,25年度にスペインで開催される国際会議(IFESS 2013)に応募してOral presentationに採択された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,計測した動的座位バランス能力の相違を用いることによって,バランス保持能力の優劣の定量化や,トレーニングや加齢によるバランス保持能力の改善・劣化の判定可能性について検討する.また,ビタミンeの摂取とバランス能力保持との相関性や,歩行機能や易転倒性との関係を明確にし,転倒防止への実用的かつ効果的な介入方法について検討していく.さらに,臨床現場で幅広く利用されているFunctional Reach TestやTimed Up and Go Testなどの易転倒性検査を同時に実施することで,転倒リスクを抱えた高齢者の座位バランス能力と歩行機能との関係を明確にし,本人の転倒リスクのレベルや訓練効果を高齢者にわかりやすく提示可能な座位バランス評価・訓練装置の実現を目指す予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,座位における重心軌跡だけではなく身体運動をより精密に計測するため,光学式モーションキャプチャ装置を購入して基礎データの蓄積を進める.また,本研究の結果を国際会議において発表し,英語雑誌に論文投稿を行う.
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