研究課題/領域番号 |
23500643
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
嶋脇 聡 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10344904)
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研究分担者 |
酒井 直隆 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90235119)
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キーワード | 電動義手 / MRI / 指腹部 / 把持力 / 有限要素法 / 感性 |
研究概要 |
本研究の目的は,ヒト手指を参考にして,電動義手の骨格と表皮の間にpulp構造(柔軟性に富んだ組織)を設置して,安定した物体把持が可能な最適なpulp複合構造および最適なpulp素材を開発する. 自治医科大学の協力により,MRI撮影された示指画像から、白色の斑状となっている部分が血液を多く含むpulp部分の外周を輪郭抽出用ソフトウェアSURF driver(ver.4.0,David Moody and Scott Lozanoff)を用いて抽出し,指軸方向に積層することで立体的な指尖部内pulp形状を構築した.このデータを用いて、電動義手骨格部に搭載する試作pulpを製作した。その素材として、緩衝材といてよく用いられるゴムスポンジから選定した。ゴムスポンジの中から、特性の異なる3種類(ウレタン系ゴム、天然ゴム・クロロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム)を選定した。各ゴムスポンジから、低硬度(硬度5~10度)と高硬度(35~45度)のものを選び、よって6種類の素材を選定した。 各素材を試作pulp形状に加工し、電動義手骨格部に接着し、その上に超軟質ウレタンゴム(硬度15度、厚さ2ミリ)で加工した表皮を取り付けた。この試作pulpを搭載した電動義手に直径70ミリの球形を把持させて、グローブスキャンシステムを用いて接触面積を測定した。比較として、成人男性10名でも同様に球体把持を行ってもらい、接触面積を測定した。 実験の結果、ウレタン系ゴムの超低硬度ウレタンゴム(硬度5度)が最もヒトデータと近かった。一方、高硬度の試作pulpでは、ヒトデータの半分程度の接触面積であった。低硬度素材の場合、低い荷重で大きく変形するため、球体と電動義手との接触面積が増加したと考えられる。また、超低硬度ウレタンゴムはゲル素材であり、バウンドレス性を有していることがヒトデータに近かったと考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定であったpulpを搭載した電動義手を製作した。これを用いて、球体を把持した場合の接触面積を計測し、ヒトデータと比較を行った。ヒトデータの比較から、超低硬度ウレタンゴムが電動義手pulp素材に適していることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
MRIによるヒト指尖部の画像をさらに取得して、ヒトデータを充実させる。MRIデータおよびCTデータからpulpを有するヒト指尖部の有限要素モデルを作成して、平面圧迫および球体圧迫時の指腹部およびpulp部の変形を解析する。MRIデータと有限要素データを比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
指腹部を変形させながらMRI撮影することができる実験装置を製作する。この材料を購入する。有限要素法ソフトウエア(ANSYS LS-Dyna,サイバーネット社)をレンタルする.これまで得られた研究成果を論文で報告するための和文英訳翻訳費用、学会掲載費用を支出する。
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