研究課題/領域番号 |
23500646
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤波 努 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70303344)
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研究分担者 |
杉原 太郎 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (50401948)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 認知症 / 介護 / 高齢者 / 行動推定 |
研究概要 |
1. 入居者の位置情報の利用方法 介護施設における入居者の行動および行為系列をデータに基づいて推定する方法を開発するため、過去にグループホームにて収集した入居者の位置情報を解析した。自力で歩行可能な5名の入居者について2年半分の位置情報を解析し、長期的な行動変化を調べたところ、夏期に行動量が低下する傾向が全員にみられた。さらに2名について詳細に行動変化を調べたところ、衰弱死した入居者については逝去の約3ヶ月前から徐々に活動が低下していく様子が、また居室内にて転倒し骨折した入居者については事故の4週間前からゆるやかな低下が観察された。 行動が推定可能であるためには入居者の活動に規則性があることが前提となるが、本調査では入居者の行動に季節変動があること、また逝去や事故の前には行動量が低下することを見いだした。行動推定モデルを確立していく上では取り扱うデータを適切に選ぶことが重要であるが、本調査は季節変動や加齢に伴う行動量低下など、データの安定性に影響を及ぼす要因を実際に特定した点に意義がある。 このような発見は本研究を完遂させるために必要なデータ収集について重要な指針を与えると共に、入居者の状態変化に応じて適切な住環境を提供していくことにも応用可能であり、データに基づく介護の可能性を示し得た点で重要な発見といえる。2. 入居者の行動観察 介護施設における入居者の行動および行為系列をデータに基づいて推定する方法を開発するため、ある介護施設において一週間カメラを設置し、夜間の行動を観察した。調査では5名を観察対象としたが、夜間の行動はほとんどが居室からトイレへの移動であり、規則性が高く、入居者らは夜間ほぼ同じ時間帯に利用していることがわかった。杖をついていたり歩行器を使っている入居者らが廊下ですれ違うこともあり、自立度の高い入居者であっても転倒の危険は無視できないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は入居者および介護者の行動のモデル化が目的であり、平成23年度はそのために必要なデータを洗い出すとともに、現場からの要望を受けて夜間の行動を観察することができた。データを分析してモデル化の対象を絞り込めた点で本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度はセンサーを介護施設に設置してデータ収集する予定であったが、協力施設が大規模な増改築を行ったこと、またその日程が知らされていた時期よりも遅れたこともあってセンサーの設置に至らなかった。平成24年度はデータ収集のための機器設置を進める。機器設置に際しては介護者らの懸念、特にプライバシー侵害に関する懸念が強いので、作業にあたっては介護者らとの意見交換を活発にし、慎重に進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度はセンサーを介護施設に設置してデータ収集する予定であったが、協力施設が大規模な増改築を行ったこと、またその日程が知らされていた時期よりも遅れたこともあってセンサーの設置に至らなかった。平成24年度は介護施設におけるデータ収集を進めるため、平成23年度の未使用予算を平成24年度分と併せてセンサーや情報機器を購入する。平成24年度の予算では収集したデータの回収、分析などを一部学生に分担してもらうための謝金を確保する。本研究については文化的な差異が影響すると予想されるので国際学会などで発表する機会を増やし、海外の研究者らとの議論を活発化する。そのための渡航旅費を旅費として計上する。
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