研究課題/領域番号 |
23500646
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤波 努 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70303344)
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研究分担者 |
杉原 太郎 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (50401948)
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キーワード | 認知症 / 高齢者介護 / 行動予測 / RFID |
研究概要 |
本研究はグループホームを対象として(1)介護者および入居者について、それぞれ推定可能な単独行動を特定する、(2)介護者について、推定可能な介護行為を特定する、(3)行動推定に必要なデータを特定し、それらを収集するセンサーを選定する、(4) 推定可能な行為系列を特定する、ことを目的としている。これまでのところ入居者の行動に焦点を当て、データ解析の方法を研究してきた。 RFIDタグを挿入したスリッパで位置情報を取得する仕組みを使って2年半に渡りデータを収集していたが、そのデータを様々な角度から分析し、次の知見を得た。(A)季節的変動があること:気温が上がる夏期に入居者らの活動が低下することがわかった。データ収集前には気温が下がる冬期に活動が低下するものと予測していたのでこの点は驚きであった。(B)2ヶ月前から老衰死の兆候が見られること:データ収集中に老衰して亡くなった方がいたがデータを精査したところ2ヶ月前からその兆候がみられた。終末期ケアに入るタイミングを決める際に有用な知見がえられたものといえる。(C)居室内で転倒した方の行動特性を特定した:自室内にて転倒して骨折し、入院された方がいたが、データからはやはり2ヶ月ほど前から行動範囲が徐々に狭まりつつあったことがわかった。行動量そのものはそれほど変動していなかったので、位置情報を取得して行動を把握することには意味があることを示せた。 以上の結果をまとめて「社会技術研究会」論文誌に投稿し、採択された。平成25年度5月に著者「藤波 努・杉原 太郎・三浦 元喜・高塚 亮三」、タイトル「屋内位置情報に基づく認知症高齢者の長期的行動変化の分析」として出版される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は介護者および入居者について、それぞれ推定可能な行動を特定し、その具体的な方法を開発するものである。これまでに入居者の行動の特徴を把握することができた。また特定するアルゴリズムについても一定の知見が得られた。以上より本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
介護者らの意見を聞きながら研究を進めていく。これまでの連携から介護者自身の行動予測については必要性が低いことがわかったので、入居者らの行動をさらに深く研究する。一方で位置情報よりも豊富な情報を取り扱いたいとのニーズもみえてきたので、動作データを収集するなどして、より入居者の動きに着目した分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度未使用額(約88万円)は介護現場でのデータ収集が遅れたことに起因する。機材の購入費および協力者らへの謝金に残額が発生した。介護者らにデータ収集の意義を示すためデータの解析に注力したこと、および適切な協力機関をみつけるのに時間がかかったことが原因であるが、これらの問題については解決の見通しがついたので、ほぼ当初予定通りに次年度も研究を進める。H25年度は動作データの解析を行うため、海外の先端的な研究機関にて共同研究を行い、高齢者の動きの特徴を調べる。得られた知見をもとに介護施設にて行動記録と解析ができるシステムを開発する。またその試用実験をおこない評価する。
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