研究課題/領域番号 |
23500647
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大西 昇 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (70185338)
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研究分担者 |
竹内 義則 名古屋大学, 情報連携統括本部, 准教授 (60324464)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 商品情報 / 消費期限 / 賞味期限 / 情報保障 / 視覚障害者支援 |
研究概要 |
本研究の目的は,身の回りに存在する看板・案内板,メニュー,商品の消費期限,ATM等の画面に表示された文字など,視覚障害者が日常生活で必要な文字情報の取得を可能とする,持ち運びできるシステムを研究・開発することである.本システムは,小型カメラやモバイルスキャナで採取した,文字列を含む画像を計算機で処理して,抽出した文字情報を合成音声で使用者に伝達する.システムの実現は,視覚障害者の切実なニーズに応え,情報保障の一手段を提供する.まず,ニーズ調査として,名古屋盲学校,名古屋盲人情報文化センターの協力を得て,視覚に障害のある人が,買物においてどのような文字情報の入手を希望されるのかを,面接により調査した.その結果,商品名,価格,消費期限/賞味期限が上位を占めた.そこで,23年度は,消費期限/賞味期限を抽出し,使用者に伝達する手法を研究した.スーパーで購入した生鮮食品と牛乳等のパックをいろいろな角度・背景で撮影して,処理対象とする画像を収集し,画像に正解ラベルを付した.消費期限と賞味期限とに共通する文字の「限」を,Support Vector Machine(SVM)により生鮮食品やパックが写った画像中から抽出する.「限」の傾き分だけ画像を補正したうえで,「限」の周辺領域を切り取り,それに文字認識ソフト(OCR)を適用し,文字情報を抽出する.最後に,得られた消費期限/賞味期限の情報を合成音声で出力する.生鮮/加工食品の画像40 枚と紙パックの画像30 枚を用いた実験を行った.消費期限/賞味期限の認識のF値(適合率と再現率の調和平均)は,生鮮/加工食品は0.84,紙パックは0.39で,後者については改善が必要であると言える.画像1 枚あたりの処理時間の平均は1,128msと,待ちを感じさせない時間と言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日常生活で必要な文字情報として,消費期限/賞味期限の情報を画像処理で抽出し,音声で使用者に伝えることを実現し,パックでの認識率の向上が課題であるが,生鮮食品については高い認識率が得られた.これらの研究の成果を,国内の大会や研究会で2件で発表し,関連学会の論文誌に投稿した.また,本申請課題のウェブページを作成し,社会にも情報発信をしている.米国で開催の福祉関係の大きな国際会議(3月)で発表すべく応募したが,不採択であった.しかし,オーストリアで7月に開催のICCHP2012での発表が決まった.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画通りに進捗しているので,平成24年度は,食堂などでのメニューに書かれた文字情報を取得する方法を研究する.この際,斜め方向からの撮影による投影歪みが問題になるので,その解決方法を考える.さらに,メニューの場合,記載されている文字情報が多いので,使用者とシステムとの対話により,使用者の意図をくみ取ることで,スマートな情報提供を実現したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には申請時の使用計画通りに執行するが,平成23年度に計画した計算機の購入および国際会議での調査を,平成24年度に繰り越して研究費を使用する.
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