研究課題/領域番号 |
23500648
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研究機関 | 第一工業大学 |
研究代表者 |
大惠 克俊 第一工業大学, 工学部, 准教授 (80388123)
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キーワード | 人工喉頭 / 圧電発音体 / 表面筋電位 / 代用発声法 / スピーチバルブ / 圧電ポンプ |
研究概要 |
平成24年度においては,圧電発音体形状の最適化設計に関しては音源単体の形状だけではなく,格納するケースや導音チューブを含めたシステムとしての最適化を行う予定としていたが,音源単体の最適化が遅れているためその他に関しては進んでいない.これは形状最適化に関して空気の圧縮性などを新規に考慮に入れたため,シミュレーションのやり直しを行うことになった点に起因する.また振幅の増大を目指して振動板と駆動部の結合部分に着目し,その構造の最適化にも着手したが,こちらはヒンジ形状を用いる事で一定の効果を得た. スピーチバルブに関しては,アクチュエータを前年までの形状記憶合金から小型ステッピングモータに変更を行い,それに適したバルブ設計と試作を行った.試作したバルブの寸法(アクチュエータおよび固定用部品含む)は,直径最大部で31mm,体外露出部の高さ22mmとなった.バルブ内の呼吸気流に関する有限要素解析を行ったところ,初期の形状では流線に乱れが生じることが判明した.そこでバルブ内に整流用の部品を設置したところ,流線の乱れが減少し,結果として圧力低下も抑えられることがシミュレーション結果より明らかとなった. 発声補助用小型ポンプに関しては,必要仕様の再確認を行ったところ,内蔵する小型ポンプユニットの個数をこれまで用いてきた8個から10個に増加させる必要があることが判明した.そこで,この個数を内蔵するのに適したポンプユニット形状を模索し,最終的に110mm×70mm×20mmの外寸とした.必要仕様の再確認において,健常人の呼気流量などの詳細な文献検索および実計測などを行ったことや,携帯に適した形状のユニット形状の策定に時間を要したため,目標であった流路形状の最適化,試作・評価は行うことが出来なかった. また本年度より制御ユニット形状の最適化に着手し,形状についての考察と,モックアップの作製を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現段階で音源形状の最適化に時間を要しており,予定していた試作・評価までは到達していない.原因として.シミュレーション上で必要とする性能を満たすことが出来ていないため,それを解決するために空気の圧縮性に関する要素を導入したこと,振動板と駆動部の結合部分の最適化を行ったこと等により,検討するべき要件が増大したことが挙げられる. スピーチバルブに関しては,アクチュエータを昨年までの形状記憶合金から小型ステッピングモータに変更したこと,およびそれに伴う設計変更により一次試作にとどまっている.しかし,バルブ内部の形状の最適化という新しい研究課題に発展し,現段階では整流用部品を設置することで得られる利点の確認まで行うことができた.この最適化をさらに進めることで,より使用感のよいバルブが実現されることが期待される. 発声補助用小型ポンプに関しては,必要仕様の見直しから内蔵する小型ポンプユニットの個数変更を行い,それに伴うポンプユニット全体における小型ポンプの配置および,携帯に適した形状の策定に時間を要したため,研究計画からの遅延が見られる.しかし新規に決定したポンプユニット形状は従来のものよりも薄型となり,携帯性の向上を行うことができた. 新規に開始した制御ユニットの最適設計に関しては,使用しやすい寸法や調整用トリム(発声/停止の閾値用)配置などに関する考察を行った.こちらに関しては,ほぼ計画(F-3:前倒し支払請求書記載)どおり進んでいる. コミュニケーションエイドに関しては,現在中断している,
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今後の研究の推進方策 |
人工喉頭:今後は音源形状の最適化の詰めを行い,音源単体の試作および評価を行う予定である.また共鳴用ケースや導音チューブも含めた,システム全体での最適化と評価を進める.また,音声諒解度の向上を目的とした音源のピッチ周波数制御を可能とするシステムの開発と,その制御パラメータの最適化を行う. スピーチバルブ:2012年度に試作したスピーチバルブの駆動用回路の作製と,その動作試験を行う.また,呼吸抵抗の低減を目指したバルブ内部の整流用部品の最適化設計および,その試作・性能評価を行う予定である. 発声補助用小型ポンプ:2012年度に考案したポンプユニット外形,および小型ポンプユニットの配置を基に,シミュレーションを用いた流路の最適化設計を行い,デバイスの試作・性能評価を行う予定である. 制御ユニット:2012年度に作製したモックアップを用いた使用感の評価,さらにそこからフィードバックされた情報に基づく形状の改良を行う.また調整用スイッチの形状についてより深く考察を行い,「使い易い」スイッチの実現を目指す.さらに,実際に制御用プログラムを書き込んだ制御基盤を作製,ケースに内蔵してユーザスタディを行う.本制御ユニットは様々な発声補助デバイスを制御可能であり,これらの「ハブ」としての役割を持たせることを視野に入れている.従って,このユニットのハブとしての機能強化および本ユニットを用いた福祉機器デバイス群の規格についての検討も行う予定である. 最終年度でもあるため,以上に挙げたデバイスに関して得られた成果を取りまとめ,企業との連携を含む実用化を進めていく方針である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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