研究課題/領域番号 |
23500652
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
千田 益生 岡山大学, 大学病院, 教授 (60226694)
|
研究分担者 |
堅山 佳美 岡山大学, 大学病院, 助教 (90397886)
則次 俊郎(則次俊郎) 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70043726)
|
キーワード | 人工筋肉 / 麻痺手支援システム / 歩行支援システム |
研究概要 |
24年度に新たに脳腫瘍患者の痙性片麻痺の患者さんに対して、人工筋肉を用いた屈曲拘縮改善装置を作成しました。この患者さんの麻痺は高度であり、屈曲拘縮が著明でした。自動的に指は伸展できず、ボトックスを注射した後に人工筋肉による指伸展装置を装着し指伸展を受動的に行える装置を作成しました。全ての指に、指先を包むサック状の装置を装着し、人工筋肉を作用させて伸展屈曲を行わせるのもです。療法士による可動域訓練を行わなければ、屈曲拘縮をきたすため、継続したリハビリテーションが必要ですが、人工筋肉による装置が実用化できれば自分1人で可動域訓練ができるようになります。音声によるスイッチ、あるいは動作切り替えを行えるように試作しました。できれば自動性が出現してくるようになってくれれば非常に有効であると考えました。また以前からの脳腫瘍患者さんの左上肢麻痺に対する把持装置に関しましても、より改良し、患者さんの音声で作動できるように工夫しています。ただ音声は雑音を拾いやすく、まだ適切に作動できる段階には来ていません。脊髄小脳変性症患者に対して、歩行支援装置を開発しました。足裏にセンサーを3箇所に取り付け、一か所でも体重を感知すると人工筋肉が作用し、体重を支えるシステムにしました。長下肢装具に人工筋肉を装着するシステムであり、人工筋肉で膝伸展機能を支援しました。歩行が困難であった脊髄小脳変性症の患者さんんも歩行器を用いればある程度歩行が可能になりました。装着に関する煩雑さや、システムのモニターなどの不確実性はまだまだ問題点として残っています。シンプルで確実な装置を目指しています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工筋肉による把持システムは母指、示指、中指による把持動作が可能になっております。把持する力としては強くありませんが、携帯電話程度の重さであれば何とかできるようになってきました。脳卒中など中枢神経麻痺による指の痙性麻痺で生じる拘縮に関しては、ボトックスを併用し、かなりの効果を上げることができるようになってきました。患者さん自身で装着できるようになれば、自宅での訓練も可能になると思います。現在問題になっているのは、装着しやすさの追及(できれば自分で装着できるように)、伸展する強度の調整(十分伸ばすことができて屈曲も支援できる強度)、装具使用による快適性(いまは少し当たりが出てしまうこともある)、などがあり改善しつつあると思います。操作に関して、声で行うシステムにしたいのですが、雑音などの問題や高額になるという問題もあり、研究として今は行っています。歩行支援システムでは、歩行できなかった脊髄小脳変性症の患者さんは見守りで歩行器で何とか歩行できるようになり、実用化に向けて進展してきていると思います。安全性が第一であり、安全性を確保した上で、より円滑な歩行を獲得できるように研究しています。立位から振り出し、踵接地時の膝伸展支援、反対側の振り出しと、骨盤の持ち上げ、体幹の回旋がもう少しできれば円滑な歩行動作が獲得できると考えます。有線であり、研究のためのモニターも装着していますので、煩雑なシステムになっていますが、シンプルにして見た目も良くなるように改善しているところです。全体としてはおおむね順調に進展していると思っています。
|
今後の研究の推進方策 |
麻痺手を動かす支援システムに関しましては、音声による操作システムを確立させること、装着しやすくなるように工夫すること、把持する能力を向上させることなどを今後の研究課題と考えています。対象を増やして、実用化に向けて推進する予定です。痙性に対する拘縮予防目的の場合は、やはり音声による操作の確立、装具の当たりの防止、患者さんに合わせた伸展・屈曲強度の設定、など操作面の問題と、装着しやすくするということや装着した感じがよいという快適性の問題などを解決していく必要があります。カーボンを用いたり、皮膚との接種面には柔らかい素材を使うなどの工夫をして患者さんの意見を聞いていく必要があると感じています。いずれにしても、対象を増やしてできるだけ多くの方の御意見をいただくことが重要であると考えます。歩行支援システムでは、体重を乗せた時(立脚期)に人工筋肉が作動し、体重を持ちあげた時(遊脚期)には人工筋肉がゆるむというシステムを、安全にかつ円滑に行えるように研究する必要があります。センサーの感度やちょっとした入力の変化でよりスムーズに作動できるように研修を進めていきたいと考えています。
|
次年度の研究費の使用計画 |
いままでの人工筋肉による支援システムを改良してくために、同じ対象に違ったシステムを試したり、全く違うコンセプトのシステムを構築する必要があるかもしれません、新たな対象が生じれば、新しいシステムを作成し、評価を受けるようにしようと思っています。コントローラー、人工筋肉、コンプレッサー、骨格となる装具など、3種類作成する予定です。完成して研究成果を学会で発表する場合もあり、出張などの経費もかかる予定です。基本的には、できるだけ多くの患者sンに人工筋肉支援システムを体験していただく目的で、できるだけたくさんの装具を作成したいと考えます。次年度の研究費の使用計画としては、新たな人工筋肉支援システムをできるだけ多くの患者さんに使っていきたいと考えます。
|