麻痺手に対する把持システムを構築した。前腕・手関節部・手根部までの硬性保持装具に、収縮型人工筋、伸展屈曲型人工筋を配置し、容易に装着できる装置を作成した。麻痺手に対する把持システムを構築に関して、ピンチ動作として約20Nの力を表出でき、何とかスマートフォンを把持する程度の能力を得ることができた。麻痺側の手でスマートフォンが把持できれば、健常な手で操作が可能である。麻痺した手指を動かして把持することがリハビリテーションンの一環としても重要な意味を持つと考えている。自分の動かない手が、動いていることで指が動くことの実感が得られる。ただ支えさえすればいいのであれば、器具に差し込めばよい。そうではなく自分の手で把持することで機能的な改善も期待できる。脳卒中などに代表されるような痙性麻痺による手指拘縮に対し、人工筋肉による受動可動域訓練装置(F-CPM)を開発した。ボトックス治療と併用して受動可動域訓練装置として作成した。システムすべてを一つのジュラルミンケースに収まるように作成し、患者さんの自宅でホームエクササイズとして用いることができるようなシステムを完成した。F-CPMに関しては、実用的なレベルまで来ることができたと思う。現在、患者さんの自宅で装置を貸出し、実用実験を行っている。今までのところ、痙性による拘縮は改善傾向であり、以前のような痛み、ツッパリ感などは減少している。心配していた装着したり、外したりの作業も患者さん自身で何とかできているとのことで、痙性麻痺の手指変形防止、機能回復に役立つ可能性があると考える。改良すべき点としては、さらに小型化軽量化し、使いやすく、患者さんが一人で扱うのに便利にすること、形をスマートにすることなどを行っていく必要がある。
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