研究課題/領域番号 |
23500664
|
研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
齋藤 圭介 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20325913)
|
研究分担者 |
平上 二九三 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60278976)
|
キーワード | 認知症高齢者 / 転倒予測 / 身体機能 / 知的機能 / 行動・心理症状(BPSD) |
研究概要 |
平成24年度については,医療施設における認知症高齢者集団のデータの蓄積と転倒予測モデルの構築,そして検証を課題として設定した。医療施設における対象者のモニタリング調査を進め,延べ人数118名の測定間隔1週間・追跡期間3ヶ月の臨床症状推移のデータを蓄積することが出来た。 転倒予測モデルについては,既に論文(袴田将弘,齋藤圭介,他:施設内認知症高齢者の転倒前における臨床症状推移に関する検討.理学療法科学26(5) 641-646,2011)や学会発表により公表しているが,40名程度の小標本での検討であった。そのため,今後の通所施設等での交差妥当性に関する検討に向け,新たに蓄積されたデータを基に予測モデルの再構築と検証を実施した。その成果を基に,現在2編の論文をレフリー誌に投稿準備を進めている。また認知症者における障害の特徴について類型化を試み,その成果を第47回日本理学療法士学術大会,ならびに第38回日本脳卒中学会で公表した。併せて,テスト課題の理解困難な認知症高齢者において観察式で移動能力を測定可能な指標を得るべく,既存の移動能力指標の信頼性・妥当性を検討し,Rivermead mobility indexなど3指標で支持しうることが明らかにされ,第48回日本理学療法士学術大会で公表する予定である。 これまでの研究成果を基に,日本行動計量学会岡山地域部会研究会で「認知症高齢者ケアにおける転倒の実態と予防の研究動向」と題し,招待講演を実施した。 認知症高齢者を対象とする症状推移に着目した転倒予測について,データの蓄積を経てさらに洗練させることが出来たことは大きな成果と考える。今後は医療施設標本での検討から,通所施設など他の標本での交差妥当性へと発展させる計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般に医療施設では,いわゆる認知機能の低下者は多いものの,純粋に認知症の確定診断を受けた標本の蓄積は極めて難しく,先行研究でも少数例での検討がほとんどであった。そうした中で100名を越える高頻度反復測定データを蓄積し,医療施設での転倒予測モデルの検証と洗練化を進めることが出来た。研究成果の公表に関して,平成24年度は学会発表や講演を実施してきたが,今後は論文化を進めていく事とする。 一方,最終年度に予定している通所施設など他の標本での交差妥当性の検討に向け,施設との基礎交渉を進めている。しかし予定していた調査対象施設の利用者は,脳卒中や骨関節疾患などの身体障害の方が多く,認知症の確定診断を受け,身体障害を伴わない対象適格者は少数に留まる事が明らかとなった。そのため,多施設研究によるデータの蓄積を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎え,これまで進めてきた医療施設標本での転倒予測モデルに関して論文による公表を進める。また交差妥当性検証の観点より,構築した転倒予測モデルについて予測精度を検討する。 前述したように,一般の高齢者施設においては身体障害の方が多い。そのため,予定していた単独施設での対象適格者の確保は難しく,新たに認知症デイケア施設を加えるなど,多施設研究によるデータの蓄積を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に関しては,医療施設標本での転倒予測モデルの交差妥当性に関する検討の一環で実施する調査に関連し,消耗品費,研究協力者との打ち合わせと学会出張旅費,対象者家族への通信費,書籍代で構成している。その他,成果発表のための論文投稿に向けた英文校閲の謝金,報告書印刷費での使用を計画している。 前年度未使用額に関しては,多施設研究を進めるにあたり支出が増える可能性がある調査関連費用として使用し,調査票作成やデータ管理上必要となる消耗品費,調査・研究打合せに要する国内旅費,調査依頼のための通信費等に充てる予定である。
|