研究課題/領域番号 |
23500669
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
高嶋 孝倫 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (00425654)
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研究分担者 |
中村 隆 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (40415360)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 下肢切断 / 義足ソケット |
研究概要 |
断端組織の質的評価について,(1)断端形状の定量化,(2)ソケット形状の定量化と言う観点から準備を進め,断端組織がソケットに収納された状態と収納されない状態との質的変化について,断端表面の定点位置における弾性を定量化した. 義足ソケットの研究は完成された手法はなく,それぞれの研究者によって多様性のある研究手法が提案されている.我々の手法も独自性のある提案である.今回(23年度)は形状測定として3次元ディジタイザ(FARO)を用いて切断端の断面ごとに8点の座標計測を行うことによって定量化した.この際,ソケット装着/非装着時における座標系を統一することが課題であったが,各測定断面の重心を基準座標軸上に設定することにより同一の座標系における形状比較を実現した.また,同一点における弾性値を組織硬度計(伊藤超短波OE220)によって定量化した.これについても計測点間の比較値ではなく定量的な弾性値とするために,既知の弾性値を持った素材サンプル(セプトン製)を用いた較正を行う手法を提案した.今回は静的な変化を対象とし弾性係数による定量化を行った. これによって,以下の成果を導き,これらの成果に関して第24回義肢装具学会学術大会等にて成果発表を行った.(1)ソケット装着による断端形状変化の特徴を抽出することができ,ソケット製作時の設計形状と断端の形状の変化率は相似関係にあることが分かった. (2)ソケット非装着時の断端の弾性分布を定量化し,断端内側ほど弾性率が小さいという,経験則に近似した分布データを得た.(3)ソケット装着による断端の弾性分布の変化の特徴を抽出することができ,ソケットによる断端の形状変化と弾性率の変化は相似関係にあることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的は義足ソケットの適合状態を定量的に把握し,ソケット形状解を明らかにすることにある.ソケットの目的として(1)断端の収納,(2)体重支持,(3)運動の伝達があり,先ずは(1)断端の収納に着目した断端形状と組織の質的変化について定量化手法を確立し,定量データを得ることができた. 定量化手法として3次元ディジタイザ(FARO)が研究所に所有されており,使用することができたこと,切断端軟部組織の粘弾性値を定量化するために用いた組織硬度計(伊藤超短波OE220)および弾性率既知の材料サンプルを研究協力者(藤本)より借用できたことなどによりおおむね順調に23年度の実績を導いた.
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今後の研究の推進方策 |
23年度においては,断端形状と硬度の定量化方法を確立したので,今後はこれらの計測の精密化をめざす.3次元デジタイザ及び断端硬度計による測定では測定点を増加し,より細密な測定データを得る.また,MRIによる断端計測を導入することにより,形状データのさらなる精密化に加え,得られた断端組織構成データから,組織学的・生体工学的アプローチにより断端硬度計測値の妥当性の検討を行い,断端の質的変化の定量化手法の精度を向上させる.また,同時に,被験者数を増加し,定量データの確度も向上させる. さらに,23年度に発注・購入した専用設計の圧力センサを用いて断端とソケット間の圧力を測定することにより,これまで行ってきた断端とソケットの質的変化の定量化に加え,力学的評価を行い,ソケットの適合状態を生体力学的に評価する. これにより,静的な評価に加え,歩行などの運動時のソケット内圧力も測定可能となり,ソケットの機能である体重の支持,運動の伝達についても評価を行い,総合的にソケットの適合状態の定量化手法の検討を行う. また,ここまでの断端とソケットの評価手法に妥当性の検討を加え,より適合状態の定量的評価の精度を向上させることを目的とし,ソケットの適合と不適合の状態の相違を評価することに着手する.
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次年度の研究費の使用計画 |
MRIのデータ解析を計画しているため,画像解析ソフトウェアや,得られたデータの数値解析ソフトウェアなど,ソフトウェアに関連した費用が必要となる.また,昨年度に購入したソケット内圧力の計測のための圧力センサはセンサプローブが消耗品であり,随時必要に応じて補充する.これら実験にかかる被験者の増加に伴う謝金の確保も必要となる. 成果発表として,アジア義肢装具学会(神戸),日本義肢装具学会(名古屋),国際義肢装具学会(インド)を予定している.
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