研究課題/領域番号 |
23500669
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
高嶋 孝倫 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (00425654)
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研究分担者 |
中村 隆 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (40415360)
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キーワード | 大腿義足 / ソケット / 切断端 |
研究概要 |
大腿義足は大腿切断者の切断端をソケットに収納してその機能を発揮する.切断端とソケットとの形状比較は未解決の部分が多く,本年度の目標は,第1にMRIによる撮像の解析から①切断端の形状,②ソケットの形状を数値で記述すること.さらには③切断端内部の骨,筋,脂肪組織を分離し,それぞれの分布状況を数値化する手法を提案する.第2に硬度計を用いて④切断端の部位別の硬度をソケット装着・非装着時において定量化すること,とした. ①②については画像解析手法と独自の座標系の設定によって実現した.③については現は面積比による分離を行っているが新たな手法の模索を継続中であり,クラスター解析等も視野に入れている.④の切断端硬度は昨年度よりも高精度の計測装置を用いてより詳細な結果が得られた.これらを実施して以下の成果を導き,アジア義肢装具学会(神戸),第28回日本義肢装具学会(名古屋),International Society of Prosthetics and Orthotics(インド)において成果発表を行った. 1.切断端の形状と内部の質的評価(筋,脂肪質の分離)手法を確立した. 2.複数の大腿切断者の計測結果より,切断後の年次経過と切断端の質との間に相関傾向を示唆した. 3.切断端の筋部分と脂肪部分の面積・体積との比較解析を行っている. 以上より切断端の数値的記述が義足ソケットの形状決定に際して有益な情報となり得ることは明確である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の切断者の切断端をカテゴライズし,その形状変化と内部組織である筋・脂肪組織の定量化を行い,弾性率との間の関係性を導くといった手順を考えている.これによって関係性を表す手法が確立すればその後は高額なMRI撮像を行うことなく,切断端表面から計測可能な弾性率からソケットを製作する際の形状変化率を導出することが目標としてある. しかし,現在のところ切断端の計測手法と解析手法について検討を重ねている段階である.MRI画像から筋・脂肪組織の判別する段階であり,手法を提案できた段階である.被験者数も少ないことから切断端のカテゴライズや平均的な形状変化率を示す段階にない.
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今後の研究の推進方策 |
25年度は以下の課題を遂行する予定である. ① MRI画像から断端の組織構成を導出し,弾性分布との関係性から断端の機械的性質について記述する.さらに,これを複数の被験者に対して執行し,切断端の質的カテゴライズと各カテゴリー毎の機械的性質について整理する. ② 義足ソケットを製作する際に試行錯誤が必要なコンプレッション(圧縮比)があり,これを①で求めた機械的性質から推定できる近似式を提案する.これによって数値的に設計されたコンプレッション値によるソケットを製作することが可能となる. ③ 実際に②のソケットを製作しその適合性を被験者の感覚によるVAS,断端-ソケット間の圧分布とにより検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き大腿切断者の切断端を計測・解析する必要があり,そのために被験者と技術補助員に対する費用が必要となる.さらに,結果として提示する形状変化率を用いて実際のソケットを製作する費用,及び検証のための実験費用が必要である. また,最終年度であり,日本義肢装具士協会学術大会(沖縄),日本義肢装具学会学術大会(佐賀)における成果発表と論文執筆を予定している.
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