本研究では、体力低下が指摘されている運動能力、とくに基礎的運動である50 m走を取り上げ、過去(1980年代)と現在(2000年代)の小学生から高校までの子ども達の疾走能力を比較し、発達バイオメカニクス的観点から、その能力の低下となっている要因を明らかにすることである。このことによって、小学生から高校生までの走運動の学習指導やスポーツのコーチングに役立てようとするものである。 1)研究1 疾走能力の横断的発達 2)研究2 走運動の学習効果 研究1の結果から、小学1年生(7歳)から高校3年生(17歳)にかけて、疾走能力および疾走動作の発達は、男女ともに形態的な発達と機能的な発達の両要素によるものであることが示唆された。また、男女の疾走動作は、女子の方が男子よりも接地中の膝関節および足関節の屈曲伸展が大きい動作であることが示唆された。また、1980年代と本研究の子どもたちの疾走能力において、疾走中の支持時間が本研究の子どもたちの方が長くなっていることが明らかとなった。このことから、疾走動作が十分に習熟していないことが示唆された。 研究2の結果から、中学3年生を対象として8時間の短距離走の授業によって男女とも100 m走タイムの学習効果を検討した。その結果、男女ともその学習効果が認められたことが明らかとなった。また、男子では全速維持局面、女子のでは全力疾走および全速維持局面の疾走速度を高めることができ、大きな効果があったことが示唆された。一方、連続写真を活用した学習では、「動作のポイント」の内容によって学習効果がみられた局面とみられなかった局面があり、その内容を十分に吟味して行うことが重要であると考えられた。
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