研究課題/領域番号 |
23500674
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 秀幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70231412)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 運動スキル / 運動学習 / 知覚スキル / 知覚トレーニング / 行為予測 |
研究概要 |
対戦型スポーツ競技において,対戦相手の行動予測や行為結果予測に係る知覚スキルは,優れた競技成績に不可欠な要素である.一般に,運動スキルの高い競技者は知覚スキルも高い傾向にある.しかし,その相互依存関係は不明な点が多い.本研究では,学習実験パラダイムを用いて,知覚スキルパフォーマンス向上に対する運動スキル習得の効果を検証する.この目的を達成するために,日常生活においてあまり経験したことのない運動パターンとして,円筒形の投擲具を用いたテニスボール投げを運動学習課題に採用した.平成23年度は,行為結果予測パフォーマンスに対する視覚遮蔽効果を検証するために,投擲筒先端に取り付けた赤外線センサーを用いて投擲筒からボールが射出された瞬間を検出し,自動で液晶シャッターを閉じる実験システムを構築した.その一方で,健常な成人男子2名の被験者を対象に,視界遮蔽しない条件で投擲練習を実施した.運動課題は,2.5m離れた籠にテニスボールを投げ入れることであった.週3回,1回あたり30分,200~240球の投擲を行わせた.成功率を運動スキルの修得度の尺度とした.練習セッション開始時点では,成功率は両者ともに30%未満であった.8週間の練習セッション終了時点で,1名は約60%であったが,もう1名は80%を超える成功率を達成した.この結果は,当該運動スキルの修得には約2カ月程度必要であること,スキルの修得水準に個人差があることを示している.今後,運動スキルと知覚スキルの相互作用の仕組みを明らかにする目的で当該課題を学習実験に用いる場合には,運動スキル修得度の差が大きいことを想定した実験デザインにする必要性がある.いずれにしても,成功率80%は,極めて高いスキルレベルと判定できる.そこで,この被験者の投擲動作をビデオ撮影し,熟練者モデルとして,知覚スキル評価用のテストを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成23年度に作成した視覚遮蔽実験システムは有線方式であった.そのため,投擲動作スキルの修得を阻害することがわかり,無線化へと改良することにした.無線機器の選定,電子基板作成,実証実験等に予想外に時間を要し,計画していた行為結果予測パフォーマンスに対する視覚遮蔽効果の検証実験を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度上半期までに視覚遮蔽実験システムの無線化への改良を完成させ,下半期には行為結果予測パフォーマンスに対する視覚遮蔽効果の検証実験を実施する.これと並行し,知覚スキル評価テストを実施し,運動スキル修得前の知覚スキル水準の一般的傾向を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験システムの不具合により行為結果予測パフォーマンスに対する視覚遮蔽効果の検証実験を行えなかったために,被験者謝金が予想よりもかなり少ない額になった.次年度使用額は,主に被験者への謝金として使用する計画である.
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