研究課題/領域番号 |
23500674
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 秀幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70231412)
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キーワード | 運動スキル / 運動学習 / 知覚スキル / パントマイム / 動作制御変数 |
研究概要 |
対戦型スポーツ競技において,対戦相手の行動予測や行為結果予測に係る知覚スキルは,優れた競技成績に不可欠な要素である.一般に,運動スキルの高い競技者は知覚スキルも高い傾向にある.しかし,その相互依存関係は不明な点が多い.本研究の目的は,知覚スキルパフォーマンス向上に対する運動スキル習得の効果を検証することである.平成23年度は,円筒形の投擲具を用いたテニスボール的当て課題を被験者に2ヶ月間練習させた.その結果,投球スキル学習の個人差は,ボールリリース時に投擲具にかかる反力の検出能力に関係している可能性を突き止めた.反力を効果的に利用して投球している被験者の課題パフォーマンス(的あて成功数)は,反力を利用できていない被験者のパフォーマンスよりも明らかに優れていた.このことは,ボール反力の知覚スキルと投球スキル間に相互作用が存在することを示唆する.そこで,平成24年度は,ボール垂直投げ上げ動作のパントマイムパラダイムを用いて,ボール反力情報の有無が投球動作に及ぼす影響を解析した.実験課題は,目標高までボールを垂直にできるだけ正確に投げ上げることであった.被験者はこの運動課題を,実際にボールを投げ上げる条件とボールを投げ上げるフリをする(パントマイム条件)条件の2つの方法で行った.長期間の野球経験を持つ被験者は,実条件・パントマイム条件に関わらず,スイング加速度/スイング振幅の比はほぼ一定であった.他方,野球やその他の球技経験のない被験者は,スイング加速度/スイング振幅比がボールの有無によって変化した.この結果は,投球スキルの高い個人は,ボール反力の得られないときにも,ボール反力があるかのような動作を再現できること,すなわちボール反力の大きさを知覚認知して動きを調整できることを示唆する.この研究成果は,平成25年11月に開催される国際学会において発表を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では,年度上半期までに,投球動作の知覚スキルを評価するテスト方法としてリリース時に投擲具にかかるボール反力の計測装置を製作する予定であった.その計測装置の試作機に不具合が見つかり,その修正と改良機の製作に時間を要してしまった.これらの理由により,投球動作知覚スキルと動作スキルの関連性を解析するための学習実験を実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
投擲具に加わるボール反力の計測装置が完成したので,年度の上半期までに実験システム全体を完成させ,下半期中には実験を完了させる予定である. これに平行して,昨年度得られた研究成果を国際学会において発表する作業を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度当初の計画では,24年度内に国際学会発表を予定し,そのための旅費を計上した.しかしながら,研究進行が予定より遅れたために国際学会への発表投稿ができなかった.また,実験被験者の謝金も計上していたが,実験実施の遅れにより予定通りには支出されなかった. 平成25年度内の国際学会発表が採択されたので,翌年度分として請求し合算して国際学会の参加費と旅費に充てる.また,作業が遅れている実験の被験者謝金に充てる.
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