本研究では、昨年度に引き続き、持久性運動後における血圧、脳の酸素化動態(近赤外分光法による)、ひいては血流動態、および心的状態の変化について、暗算パフォーマンスとの関係も含め検討した。また、ガム咀嚼の影響も検討した。健康な男子学生6名を被検者として安静および運動実験を行った。両実験では、まず、プレ(pre)測定を行った後、運動実験では60%心拍予備強度の運動を40分間行い、安静実験ではその間、椅座位安静を保った。その後は0.5、1および1.5時間後の各時点に循環パラメータの測定、心的状態の検査や暗算テストを行った。測定は半仰臥位で行った。暗算テストは4桁から2桁の減算を10分間行った。 postを通して、収縮期血圧は安静条件>運動条件であった(p<0.05、1.5時間後の差10.7 mmHg)。拡張期血圧には条件間に有意差はなかった。心拍出量(CO)、総末梢血管抵抗、前頭前野の酸素化、脱酸素化、および総ヘモグロビン(Hb)濃度と心的状態には、いずれにも条件間に有意な差はなかった。暗算の総回答数は、運動条件でのみ、preに比べて0.5時間後に増加した(p<0.05)。1.5時間後のガム咀嚼によって、血圧(+3~4 mmHg)、COと酸素化および総Hb濃度は上昇した(p<0.05)。心的状態および暗算パフォーマンスは有意に変化しなかった。いずれの応答にも条件間に有意差はなかった。 以上のことから、持久性運動後には安静にした場合よりも収縮期血圧は明らかに低下するが、そのような血圧低下と前頭前野の血流量の応答との間に関係はないことが示唆された。また、運動後の血圧応答と心的状態および暗算パフォーマンスとの間にも明らかな関係はないが、運動直後には暗算パフォーマンスは改善されることが示唆された。加えて、運動後の低血圧状態におけるガム咀嚼によって血圧は明らかに上昇することが示された。
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