研究期間の最終年度となる平成26年度は、研究成果の取りまとめとして以下のような内容(概要)の論文を作成し、関係学会への投稿を行った。 近年、日本の子どもにおける運動能力や身体活動の二極化が問題にされている。この二極化は能力や活動の格差によるものと、単一の遊びと多様な遊びのように活動の偏りによっても表される。そこで本研究では、幼児の運動能力の偏りについて明らかにし、その偏りとライフスタイルの関連について検討することを目的とした。 1409名の3-5才児を対象に、5月と11月の年間2回、2年間、21項目の運動能力測定を行った。毎年5月に子どもの保護者を対象として、子どものライフスタイル(遊びや身体活動の時間、空間および仲間に関連する項目)に関するアンケート調査も実施した。運動能力テストの因子分析によって「跳移動」「走力」「リズム」「操作」の4つの運動能力因子を抽出した。各因子の因子スコアに基づいて、子どもを優群、中群および低群に分類した。運動能力の偏りの構造的関連を解釈するため、多重コレスポンデンス分析とノーマルバリマックス回転を用いて、カテゴリースコアを算出した。サンプルスコアの平均値を年齢、性およびライフスタイルによる二次元軸上に配置した。半年の季節的な変化とその方向はホテリングのT2検定とマハラノビスの汎距離で検討した。 「走力・リズムH、操作・跳移動L」とその反対の特徴を示す、2つの運動能力の偏りパターンが抽出された。年長のきょうだいがいないこと、開放的空間での遊び、帰宅後の運動遊びが偏りに関連することが示された。一人っ子で、運動系の習い事をしておらず、子ども部屋がある子どもに、春から秋への季節変化とともに、運動能力の偏りが生じるという結果が示された。遊びや身体活動の時間、空間および仲間は、遊びの変化や体力低下のみならず、運動能力の低下にも関連することが示された。
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