炭酸泉浴の人生理機能に対する効果は、古くからヨーロッパで活用されている。我々の先行研究において運動後の炭酸泉浴が筋疲労の回復促進効果を確認している。これは炭酸泉浴による浸漬部の血流増加に伴い、筋に蓄積された疲労物質のウォッシュアウト効果が増したものと推察される。また、炭酸泉浴によるリラックス効果が増したものと考えられる。そこで我々は炭酸泉浴による全身および筋のリラックス効果を検討すべく、入浴後の重心動揺および筋肉痛の軽減について検討を行った。健康な男子大学生5名であった。被検者は水着の上にTシャツを着用し、椅子座位にて5分間安静の後、浴槽に入り、15分間の全身浴(水温35℃)を行った。浴水は水道水または人工炭酸泉で、日を改めそれぞれの浴水で行った。入浴前と浴後に、重心動揺計測装置上で60 秒間の静止立位を開眼および閉眼条件下でそれぞれ行った。また、筋肉痛の軽減効果については健康な男子大学生12名が被検者であった。椅子座位5分の後、高さ2.5 cmのプレート上につま先のみ架けて踵を浮かせて立ち、カーフ・レイズ(爪先立ち運動)を4秒足底屈、4秒足背屈のリズムで100回行った。その後、被検者はVAS 、Talag scale、筋硬度を測定し、10分間の回復期に椅子座位安静で水道水足浴、人工炭酸泉足浴を行った。10分間の足浴終了後に、再びVAS 、Talag scale、筋硬度の測定を行った。2日目以降は、5分の椅子座位安静後VAS 、Talag scale、筋硬度を測定し、10分間下腿の水道水足浴、人工炭酸泉足浴を実施し、再びVAS 、Talag scale、筋硬度の測定を行った。その結果、重心動揺の総軌跡長は人工炭酸泉浴後、開眼時、閉眼時とも有意に低下した。また、筋肉痛は運動後、炭酸泉足浴で有意に低い値となったが2日目以降は有意差は見られないものの炭酸泉足浴で低い値となった。
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