当該研究の最終年度は、2つの課題に絞って実施した実験的研究の成果について、まとめて発表した。 (1)運動の習慣化へ及ぼす音楽聴取の効果:運動の習慣化の促進要因として音楽聴取に着目した。運動中の音楽聴取が楽聴取が自律神経活動と気分プロフィールに与える効果を明らかにすることを目的として,非鍛錬大学生10名(男性5名,女性5名)を対象に30分の自転車運動中に,被験者の好みの音楽を聴取する聴取実験と音楽を聴取しない対照実験を最低1週間の間隔を空けて実施した.その結果,自律神経活動指標である心拍変動は聴取実験と対照実験の間に有意な差は認められなかった一方で,唾液アミラーゼ活性値は聴取実験において有意な増加を示し(p<0.05),また唾液コルチゾール濃度は対照実験において有意な減少を示した(p<0.05).気分プロフィール調査における,疲労と混乱のネガティブな感情が聴取実験においてのみ有意な減退を示した(p<0.05).本研究により,運動中に音楽を聴取することにより運動前のネガティブな感情が緩和される効果が示唆された. (2)運動の習慣化が及ぼす認知機能への効果:運動習慣が形成されている大学生において、学業成績の向上の基盤となりうる認知機能に着目した。持久的運動と間欠的運動を比較し,負荷の強弱変化が認知機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、運動習慣の形成されている大学生8名を対象として2種類の運動負荷実験を実施した。その結果、運動の種類に関わらず,主観的な疲労感の増加に伴い認知処理速度が向上することが確認された.間欠的運動は,持続的運動と比較して、抑制機能を向上させ,その一方で注意の切り替えを散漫にさせることが示唆された.
|