研究課題/領域番号 |
23500685
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
鈴木 明哲 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70252947)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 戦後オーストリア / 体育史 / スポーツ史 / アメリカ占領軍 / Erziehung |
研究概要 |
今年度はオーストリアに渡航し、ウィーンにて資料の収集を夏季に実施した。特にオーストリア国立文書館においては戦後占領期の非常に貴重な行政文書を閲覧することができた。しかしながら、その数量は非常に膨大で、なおかつ体系的な目録整理がなされていないのが現状であり、今回は資料の全体像を大まかに把握するにとどめ、必要箇所のコピーは次年度以降の課題として積み残すことにした。そのほかにもオーストリア国立図書館においては1946年の「学習指導要領」を閲覧、コピーすることができた。また、ウィーン大学中央図書館雑誌室ではアメリカ占領軍が刊行していた雑誌Erziehungを閲覧、コピーすることができた。 上記のような今年度の資料収集状況に鑑み、今年度は雑誌Erziehingを主資料に据えた検討、考察を実施し、その結果を9月に鹿屋体育大学で開催された日本体育学会大会において口頭報告することとした。 雑誌Erziehungを検討、考察した結果は以下のようである。 アメリカはオーストリアの体育・スポーツに対し、民主化を推進しようとしたが、そのために導入された方法が生徒自身による問題解決を目指したグループ学習であった。またバスケットボールに代表されるようにアメリカスポーツの導入も推進していたが、その活動は両国の共同体制によって組織化されており、オーストリアの体育・スポーツ復興が全面的な自国主導の自力復興によって成し遂げられたのではなく、幾ばくかの占領国からの働きかけがあったことが判明した。また一方では、アメリカによるグループ学習による民主化の推進と、それに対して1920年代からの伝統に固執しようとするオーストリアという構図も垣間見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会での口頭報告までできたところは大きな成果として認められる点である。しかしながら、復興財源計画との関係から全額交付が遅れたところは研究計画の策定にやや影響があった。 ウィーンのオーストリア国立公文書館所蔵資料が一切手つかずで終わってしまったところは研究の遅れとして指摘できよう。膨大な資料をどのように整理すべきか、次年度以降、この研究の進展を左右するところである。
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今後の研究の推進方策 |
大きな課題として積み残されたオーストリア国立公文書館所蔵資料の整理、そして必要箇所のコピーが最重要課題である。当初の計画では渡米し、アメリカ占領軍に関する資料も収集する予定であったが、まずは在オーストリア資料の収集を完了してから再度渡航計画を練り直してゆきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の残金は5千円未満であった。この残金が生じた理由は全額一括交付ではなく、分割交付となったためと考えられる。つまり、細部にわたる計画の立案がうまくできなかったことによる。 次年度もやはり渡航費が大きな比重を占めることになるが、2回の渡航を予定している。1回はオーストリア国立公文書館所蔵資料の整理とコピーのためであり、この作業の進捗状況を見ながら2回目の計画を立ててゆきたい。 資料が順調に集まり、検討及び考察が進めば学会における口頭報告や投稿も予定している。
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