研究課題/領域番号 |
23500688
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石垣 健二 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20331530)
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キーワード | 間身体性 / 身体的対話 / 身体的な感じ |
研究概要 |
本研究課題は,体育(身体教育)およびその他身体運動によって「間身体性」が育成されるその根拠を明らかにしようとするものである, 本研究課題における本年度の研究成果として,「体育・スポーツ哲学研究」34-2(2012年12月発行予定)に掲載決定の論文「『身体的な感じ』とは何か:対話を『身体的にするもの』についての考察」(審査付論文)がある.当該論文では,体育(身体教育)やスポーツ活動における「かかわり」を「身体的対話」と位置づけたうえで,その対話が「身体的」であるということの意味について検討がされた.そして「対話」を「身体的」にするために不可欠となるのが「身体的な感じ」であり,結論として,「身体的な感じ」を次のように定義している.「身体的な感じ」とは,ある身体運動にともなって運動主体が経験する「感じ」のゲシュタルトであり,それはそれは自らの身体の感じと他者の身体の感じ,および外界の事物に対する感じのゲシュタルトである.本研究課題にとって,「身体的な感じ」の定義づけがおこなわれたことの意義は大きい.というのも,今後,体育やスポーツ活動における「間身体性」を検討するにあたり,明確な分析視点が得られたことになるからである. また,本年度の研究成果として,国際スポーツ哲学会第40回大会(2012年9月)において発表された「A Domain of Physical Experiences: Physical feelings, physical dialogues and intercorporeality(身体的経験の領域:身体的な感じ,身体的対話,間身体性)」がある.当該発表は,「対話」と「身体的対話」の領域を比較検討しながら,体育やスポーツ活動において,「間身体性」が育成される可能性を論じており,「間身体性」を直接検討したという意味で,本研究課題にとって重要であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現代社会では人間同士の「かかわり」が重要視されている.しかし,それは主観性同士(間主観性)の「かかわり」としてとらえられるという傾向がある.本研究課題は,そのような「かかわり」を身体性同士(間身体性)の「かかわり」としてとらえ,体育(身体教育)およびその他身体運動によって「間身体性」が育成されるその根拠を明らかにしようとしとする. そのために,研究初年度は,「間身体性」の概念を検討するための予備作業として「間主観性」の概念について考察が進められ,そして分析方法としての現象学的方法について検討がされた.前者では,「間主観性」とは異なり「間身体性」がどのような問題を射程とする概念であるのかが明確となり,そして後者では,そのような問題領域を分析するための方法として,現象学的方法の概要が明らかになってきた. このような現状をふまえながら,研究2年目には,体育(身体教育)やスポーツ活動における「かかわり」を「身体的対話」と位置づけたうえで,その内実に「身体的な感じ」があることをつきとめ,その「身体的な感じ」の定義づけをおこなった.さらには,「身体的対話」が単なる「対話」とどのように異なっているかを吟味し,その身体的対話によって「間身体性」が育成される可能性を検討している. これら研究の進展は,「間主観性」から「間身体性」の問題領域の明確化,そして身体運動の実践にかかわる「間身体性」の分析視点とその内実の明確化に大きく貢献している.というのも,今後「間身体性」の構造を解明してゆくためには,これら問題領域の特定とさらに精緻な分析方法の導出が不可欠であり,「間身体性」を読み解くための地盤が整えられたことになるからである.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度中に進展しつつも,発表の機会が得られなかった次のことを継続しておこなう.研究初年度に「間主観性」の概念の問題領域を整理しているので,その視点を手がかりにして,間身体性の概念の分析をすすめる.特にM.メルロ=ポンティの身体論を参考にしながら,体育学の分野において間身体性の概念がいかなる意味をもつかが検討されなければならない.間身体性の概念の検討については,「日本体育学会・体育哲学領域」において,口頭発表をする予定である. また,身体運動という実践にかかわって「間身体性」を検討する場合,「他者の身体運動をわかる」ということがどのような意味をもつのかについて検討する必要がある.ただし,この場合の「他者」とは「具体的な他者」であることもあれば,「抽象的な他者」であることもある.このことに関わって,G.H.ミードは「一般化された他者」の概念ついて論じているので,それを検討しながら,「抽象的な他者」の身体運動がわかるとは,どのような事態であるのかを探るつもりである.この論究については,「日本体育学会・体育哲学領域」もしくは「日本体育・スポーツ哲学会」において,口頭発表をするつもりである. 上記口頭発表によって得られた意見を参考にしながら,当該研究内容を論文として研究誌に投稿するつもりである.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.哲学・現象学,教育学・教育哲学,体育・スポーツ科学関連の最新図書および資料を購入予定[物品費:150千円] 2.研究成果の発表および資料収集,研究協議のため,国際スポーツ哲学会(カリフォルニア州立大学・米国),体育・スポーツ哲学会(東京),日本体育学会(滋賀),千葉大学の研究会(千葉)等に参加予定[旅費:550千円). 3.論文の投稿費および別刷り代など[その他:100千円]
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