平成25年度は3カ年計画の最終年度であり,前年度に作成した「連鎖交互回しとび」の学習ステップの妥当性をさらに検討するとともに,この運動の技術と学習ステップおよび授業展開の映像をデジタル教材としてまとめることを課題とした。 1 学習ステップの検討では,まず,授業をビデオ撮影して種々のつまずきの映像を収集した。次に,そこから得られたつまずき類型における「交互回し動作ができない」動感構造を,モルフォロギー的な運動志向分析法によって解釈し,「できる」動感構造を誘う運動アナロゴンを探究した。その結果,左右の腕を一体として同調して回旋させる運動感覚に気づかせること効果的であることがわかった。 2 映像教材を活用した授業実践は,中学校と高校の体育授業で行った。紙媒体による運動分解図で運動課題を呈示する授業形式と,動画映像をタブレットで呈示するとともに生徒同士で自らの動きを撮影して確認する活動を取り入れた授業形式の2通りの授業を行った。授業形態は2名~6名の少人数グループ学習。その結果,両者の授業においても,動きながら,自分の動きに気づき,相手の動く感じに共感してアドバイスを行う,そして各々の運動の観察内容を記述する,など自分と仲間の動感を振り返り,積極的に活動する事例がみられた。また,授業者である教員からは,運動の苦手な者も,溌剌と参加し,練習できる教材であるというコメントが得られた。 このことから,「連鎖交互回しとび」は,身体感覚能力の向上を目指した教材の一つとして妥当であることが示唆された。本研究で示した学習ステップと授業の様相は,授業教材用に視聴しやすい形式でDVD化した。 本研究全体を通して,「連鎖交互回しとび」の体系化,系統的な練習法の開発と実践意義の確認,および映像教材化を行うことができた。今後は,研究成果を踏まえて学会誌や各種シンポジウムなどで成果を発表し,教材を発展させたい。
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