本研究の目的は、実技教科書に掲載されている連続写真のコマ数の多寡やコマ割りの仕方などが運動経過を把握する能力に与える影響について検討し、どのような連続写真を掲載すれば学習者が理解し易いかを判断するための基礎資料を提供することである。 小3と中1の被験者を機械的なコマ割りによるコマ数の多い連続写真を観察するA群、同じくコマ数の少ない連続写真を観察するB群、専門家が初心者に運動経過を把握させるために最適だと考えるコマを選んで作成した連続写真を観察させるC群に分けた。観察した運動経過を紙人形の操作によって再現させることによって、①コマ数の多寡は再生課題の得点にどのような影響を与えるか、②専門家のコマ選びは機械的コマ割りと比較して再生課題の得点にどのような影響を与えるか、③被験者の年齢は①と②の要因についてどのような影響を与えるか、の3点を明らかにすることを目的とした。結果は以下の通りである。 (1)コマ数の多寡は、再生課題の得点に有意な影響を与えない。小3、中1ともに機械的コマ割りによるコマ数の少ない連続写真を観察したB群の得点はすべての技で最も低かったが、コマ数の多いA群との有意な差は認められなかった。 (2)専門家によるコマ選びは、機械的コマ割りと比較して再生課題の得点に有意な影響を与えなかった。 (3)分散分析の結果、学年×群の交互作用が認められなかったことから、被験者の年齢は①と②の要因に対して有意な影響を与えない。すなわち、①に関しては、小3でも中1でも等しく有意な差がないと言える。また、②に関しても同様である。このことから、実技教科書に掲載する連続写真のコマ数は学年が高くなるに従って多くする必要はなく、可能ならば当該の運動指導に習熟した専門家が学習者に運動経過の概略を把握させることが容易になるよう意図して選んだ7個前後のコマから作成するのが良いと考えられる。
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