研究課題/領域番号 |
23500699
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
丸山 真司 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10157414)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スクール・ベースド・アプローチ / 小学校体育カリキュラム開発 / コーディネーション能力 / Bewegte Schule / 参加型カリキュラム開発 |
研究概要 |
本研究の目的は、スクール・ベースト・カリキュラム開発の方法的枠組みを用いて、小学校固有の体育カリキュラム開発の方法の理論的な解明と実践的検討を試みることである。そのために、I「カリキュラムの基礎となる状況分析」、II「カリキュラム開発の理論仮説の設計」、III「小学校におけるSBCD方法の構築とモデルの創出」という3つの研究課題を設定し研究を展開する。今年度は、IとIIの研究課題領域を並行して行った。 今年度の成果として、第1に、「理論仮説の設計」のために「体育カリキュラムの社会的構成をめぐる諸相-開発主体の問題に着目して-」(日本体育科教育学会編(2011):『体育科教育学の現在』,創文企画,pp.27-40)をまとめたことである。そこでは、(1)各学校で展開される教師たちの自律的な体育カリキュラム開発によって教師の意識は確実に変化しその結果体育実践も変わる、(2)教師たちの協同的なカリキュラム開発は子どもと体育という教科に随伴する文化の両側面から教科内容、授業、教科外活動、教科のあり方を教師自らが問い直し変革していくステップになり、教師の専門的力量形成と同時に教師の自由と自立を促すようになることが明らかにされた。 第2に、運動文化論を基盤とした学校体育の実践課題モデルとして「三ともモデル」(「ともにうまくなる」-「ともに楽しみ競い合う」-「ともに意味を問い直す」という実践課題領域で構成)が構想され、このモデルは陶冶と訓育の統一という教授学的原則を含意したモデルであり、つまり技能と知識と価値を結びつけて育てる体育のモデルであることが明らかにされた。とりわけ「三ともモデル」の「ともに意味を問い直す」実践課題に注目すると、「ともに意味を問い直す」という課題は、子どもたちの価値形成に関わる課題であると同時に、教師の価値観や授業・教材づくりの問い直しを要求する課題でもあることが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、I「カリキュラムの基礎となる状況分析」、II「カリキュラム開発の理論仮説の設計」の両研究課題領域を並行して行った。とりわけ「理論仮説の設計」に向けての研究課題追究が中心となった。 本来、「カリキュラムの基礎となる状況分析」を進めるために、(1)子どもの身体・運動・認識の実態や体育現場の実態の分析、(2)ドイツのコーディネーション理論から基礎的運動能力の分析を行うはずであったが、文献や資料の整理に留まってしまい、まとめることができなかった。これは次年度への継続課題である。 一方で、「理論仮説の設計」に向けての研究課題については、(1)「体育カリキュラムの社会的構成をめぐる諸相-開発主体の問題に着目して-」(日本体育科教育学会編,2011:『体育科教育学の現在』,創文企画)をまとめたり、(2)「教師による体育カリキュラムづくりに向けて」(『たのしい体育・スポーツ」』30巻6号)を執筆し、教師による体育カリキュラム開発の理論的な仮説設計の足がかりができた。 平成23年度の作業課題としていたフィールド調査により小学校体育現場が抱える問題の把握については、東日本大震災で被災した学校の現地視察や教師との交流を行う中で最も悲惨な状態にある体育現場の実態から学校体育が抱える問題を明らかにしようと試みた。しかしながら、それをまとめて公表するに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、まず第1に、平成23年度からの継続課題である子どもの実態分析と、フィールド調査による学校体育現場の実態分析を行う必要がある。学校体育現場の実態分析に関わっては、東日本大震災で被災した学校の体育の復興状況について平成24年10月にドイツのMuensterで開催される日独スポーツ科学者会議で研究発表する予定である。この研究発表については、平成23年度に使用しなかったドイツへの渡航費を充てる。 第2に、「カリキュラム開発の理論仮説の設計」を図るため、ドイツの"Bewegte Schule"(運動を展開する学校、以下BS)"構想・実践の小学校体育カリキュラム開発への導入の意義と課題について考察する予定である。とりわけ、ドイツのノルトラインヴェストファーレン州のBS構想や実践の現地調査に赴く予定である(平成25年3月予定)。 第3に、小学校低・中・高学年の「目標―内容」構造を体育科教育学・教授学・教育学の先行研究を手がかりに明らかにしつつ、教師による体育カリキュラム開発の基礎となる、低・中・高学年の「授業-単元―年間計画」づくりの実践分析や教材カリキュラム開発を現場教師との協働フィールドワークで展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、以下の研究活動に主たる研究費を使用する予定である。(1)平成24年10月にドイツのMuensterで開催される日独スポーツ科学者会議での研究発表(平成23年度に持ち越した渡航費を充てる)。また、この研究のために被災した宮城県の学校への調査費や教師の情報提供費も必要となる。(2)ドイツのノルトラインヴェストファーレン州のBS構想や実践の現地調査(平成25年3月予定。海外渡航費)(3)小学校の学校体育の目標-内容構造を明らかにしていくための資料・文献の費用とともに、典型的な「授業-単元―年間計画」づくりや教材カリキュラム開発を行っている教師への調査費、および共同フィールド研究を行っていくための費用が必要となる。
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