研究課題/領域番号 |
23500699
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
丸山 真司 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10157414)
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キーワード | スクール・ベースト・カリキュラム / 大震災後の学校体育 / Bewegte Schule / 小学校体育カリキュラム開発 |
研究概要 |
本研究では、スクール・ベースト・カリキュラム開発(SBCD)の方法的枠組みを用いて、教師たちの相互作用を通して展開される小学校固有の体育カリキュラム開発の方法の理論的な解明と実践的検討を試みることである。そのために、I「カリキュラムの基礎となる状況分析」、II「カリキュラム開発の理論仮説の設計」、III「小学校におけるSBCD方法の構築とモデルの創出」という3つの研究課題を設定し、IとIIとIIIの研究課題領域を並行して研究を進めている。 今年度の研究成果は以下の通りである。研究領域I=「体育現場の実態の分析」に関わっては、東日本大震災によって壊滅状態になった宮城県東松島市の浜市小学校と鳴瀬第2中学校を取り上げ、その現状とその学校の体育の復興について考察した。この研究は、第8回日独スポーツ科学会議(ミュンスター大学)において、“ Die Wiederaufnahme des Schulsports nach dem Grossen Erdbeben in Ostjapan am Beispiel von Schulen der Praefektur Miyagi“というテーマで発表した。 研究領域IIに関わっては、”Bewegte Schule”論・実践の小学校体育カリキュラム開発への導入の意義と課題について考察した。この研究については「ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州におけるBewegte Schuleの構想と実践」というテーマで愛知県立大学「教育福祉学部論集(61号)」にまとめた。 研究領域III=「小学校体育カリキュラム開発方法の構築と開発モデルの創出」に関わっては、学校体育カリキュラム開発の重要な課題となる教科外体育の位置づけについて理論的及び実践的観点から考察した。この研究については「第145回学校体育研究同志会全国研究大会提案集」にまとめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題②~④が今年度の作業課題であった。 上述したように、研究課題①「体育現場の実態の分析」、②「”Bewegte Schule(運動を展開する学校、以下BS)“構想・実践の小学校体育カリキュラム開発への導入の意義と課題の考察」、⑤「事例分析を通して『参加型カリキュラム開発サイクル』の課題の解明」についての課題はおおかた遂行できたと思われる。しかしながら、“やや遅れている”研究もある。研究の遅れ状況は以下の通りである。 1)研究課題③「小学校低・中・高学年における「授業-単元―年間計画」の接続の論理と「目標―内容」構造について分析」については、学校体育における「目標―内容」構造の考察にとどまり、小学校固有の構造の考察に至らなかった。 2)研究課題④「教科内容・教材の系統的プログラムの構築」についての研究は不十分なまま残されている。とりわけ器械運動、ボールゲーム教材に着目し、典型的な教材カリキュラムを理論的・実践的に分析し、各教材における教科内容の系統的プログラムを作成する予定であったが、現場との調整がつかずボールゲームの教材プログラムに着手できなかった。 3)研究課題①「学童期の子どもの身体・運動・認識の実態、および体育現場の実態分析」(平成23年度の研究課題)については、一部は遂行されてものの、コオーディネーション理論から子どもの実態を分析することができなかった。また子どもの認識も予備調査に終わってしまった。さらに、大震災で被災した学校の体育の現状分析はできたが、一般の小学校のカリキュラム開発の現状分析は不十分なままである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度である。これまで積み残してきた作業課題を推進しつつ、研究をまとめていく必要がある。まず以下のような作業課題を進める。 1)コオーディネーション理論から子どもの身体・運動の実態に迫る。特に、「子どもの運動発達の危機」に関わると予想されるコオーディネーション能力についてのテストを実施しその実態を明らかにする。 2)現場の教師たちによって創られた『体育・健康教育の教育課程試案』(2004,創文企画)の作成に関わった小学校教師たちの学校及び体育カリキュラム開発の現状分析を行う。 3)理論仮説に基づいて、小学校固有の「目標-内容」構造を考察すると同時に、教材カリキュラムや教科内容の系統的プログラムを構築する。 4)平成23年度~24年度の研究成果と、上記1)~3)の研究成果を総合し、小学校体育固有のスクール・ベーストカリキュラム開発方法の構築し、新たなカリキュラム開発モデルを描き出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、以下の研究活動に主たる研究費を使用する予定である。 1)小学校体育固有の体育カリキュラム開発の方法論上の問題を把握するために、『体育・健康教育の教育課程試案』(2004,創文企画)の作成に関わった全国の教師たちにインタビューおよび質問調査を行う。その旅費と研究協力費が必要となる。 2)新たなカリキュラム開発モデルの創出に向けて、ドイツの学校スポーツ開発の理論と実践の調査(Bielefeld大学及びNordrhein Westfalen州の小中学校)をするために海外旅費が必要となる。 3)スクール・ベーストカリキュラム開発方法の構築に向けて、第64回日本体育学会(立命館大学)の体育科教育学分科会シンポジウムにおいて体育カリキュラム開発の方法及び開発主体の問題について発表する。その調査費用と旅費が必要である。4)小学校固有の「目標-内容」構造を考察すると同時に、教材カリキュラムや教科内容の系統的プログラムを構築するために、とりわけ東海地方の学校現場に出かけデータを集め分析する。そのための調査費用および研究協力費が必要となる。
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