研究概要 |
本研究の目的は、在宅生活者でADL( 日常生活動作能力) の自立した高齢者を対象として日常生活における身体活動量の増加を目指した介入方略を確立することである。 1) 高齢者の日常身体活動の実態ならびにそれに関連する要因について、質問紙調査法を用いて明らかにすることを第一段階の目的とした。とくに同一の対象者の1年後の身体活動の実態と比較するべく、H24年度を調査一年目として、H25年の調査を第二年目の調査年度とした。60歳以上80歳代までの自宅で生活する高齢者1,369人(男性703人、女性666人)から2回分の回答を得た。対象者は神奈川県S市老人クラブ連合会所属の会員であった。調査の結果、定期的運動実施者は、50%弱で全国平均(国民健康・栄養調査,2011)よりも高い値を示した。日常生活での移動と運動に関する身体活動量は、全国調査と比較(Yasunagaら、2007)して高かった。初年度の調査で「うつ傾向」を示したものは、各年代(60歳代、70歳代、80歳代)で約10%前後であった。その一年後の調査では、初年度にうつ傾向のなかった者(全体の約9割)のうち、約1割がうつ傾向に移行していた。その傾向は80歳代において顕著であった。過去1年間に転倒しなかった者の割合は男女とも年代が上がるにつれて減少していた。運動行動(TTMのステージ理論)の実行期・維持期にある者ほど、健康度は優れていた(手段的自立度が高い、うつ傾向が少ない、痩せの程度が少ない、転倒回数が少ない)ことが認められた。 2) 質問紙調査により明らかにされた身体活動に関する個人的・環境的要因と高齢者の日常身体活動量との関係を分析するために、同県S市の70歳代50人の女性高齢者に限定してライフコーダー装着の一ヶ月間の介入試験を行った。その成果を個人的健康指標との関連から分析し、身体活動維持のための行動指針を作成中である。
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