研究課題/領域番号 |
23500705
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
村田 俊也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (80270255)
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研究分担者 |
橋爪 和夫 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (80189472)
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キーワード | 剣道 / 剣道高段者 / 高齢者 / 身体教育学 |
研究概要 |
本研究の目的は、剣道愛好家高齢者の中でも高い段位を有する剣道愛好家が高齢者となっても維持している高い運動技能を高次脳機能学の観点から反応時間や積極的応答動作の手法を用いて明らかにすることである。研究の2年次である平成24年度では昨年度に引き続き、高齢者剣道愛好家が身につけている予測能力や反応動作を明らかにするための実験計画を作成することが目的であった。以下に本年度の研究実績の概要をまとめる。 ①研究代表者は、剣道高齢高段者の面談(実践を制御するための脳機能に関する聞き取り調査)を通して剣道の技能の脳内機序に関する調査を行った。その結果、剣道高段者の動きは、「日本剣道形」にある「教え」にその原理を求めることができるという仮説を導くに至った。すなわち「日本剣道形」にある「打太刀」と「仕太刀」が協働動作として行う、「先先の先」・「先の先」・「後の先」という教えが実践されているとの結論である。 ②研究分担者との研究打合せで「剣道の教え」にある気持ちと動作に関する「先先の先・先の先・後の先」をいかに反応動作の理論で説明できるかという仮説設定を行った。すなわち、剣道高段者は予測動作の中に遅延時間をプログラムしていることを考察した。これらのプログラムが身体運動として遂行可能な理由は、剣道が対人競技として一定の距離(約2m)を保持しているからであり、その空間移動に伴う時間経緯をきちんと脳内処理できる能力が高段者には蓄積されていることを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は平成24年度研究実施計画に記述した内容をおおむね達成できた。 ①剣道高齢者の脳内機序に関する仮説を「剣道の教えの脳内機序に関する仮説の作成研究~先の気位・先々の先・後の先に注目して~」と題して発表した昨年度の仮説が、真であるという確証を得るに至った。 ②剣道高齢者の身体動作に関する予知、予測に関する研究仮説に空間移動時間が重要な要因であるというプログラムを設定できた。 ③剣道高齢者の身体動作を記録できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23・24年度は初期段階としてはおおむね順調に研究を進めることができた。しかしながら、当初計画で達成できなかったことも含めて以下のように研究を推進する。 ①研究代表者はこれまでに得られた剣道高齢高段者の聞き取り調査から反応動作解析研究計画プログラムの修正のためにさらなる聞き取り調査を行う。本年度で剣道の高齢高段者が技を出している意識を具体的に反応時間で確認するためのプログラムの作成を完成する。特に、剣道高齢高段者の運動特性が位置移動に関わる時間を予測プログラムに包括しているという仮説を検証するためのプログラムの作成を目指す。 ②研究分担者は研究代表者と協力して、剣道の高齢高段者と大学生剣道愛好者の反応時間や技の身体動作認識過程の相違点を解明するための研究を行う。平成23年度~平成24年度の成果を研究代表者と次年度の日本武道学会で発表するための準備をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費使用計画は以下の通りである。。 ①反応時間測定に関する実験装置を組み立てる。また、実験や調査に伴う、謝金などの使用についても25年度予算として計画している。 ②研究代表者は平成23年度に得られた剣道高齢高段者の聞き取り調査から得られた脳内機序により作成された反応動作解析研究計画プログラムの修正のためにさらなる聞き取り調査を行う。この調査のための旅費と専門的知識の提供のための謝金に使用する。 ③剣道高齢高段者の運動特性は竹刀という道具と位置移動という時間予測をプログラムに組み込んでいるという仮説を検証するための運動プログラムの作成を目指す。プログラム作成のための専門的知識の提供に関する謝金や資料収集のための旅費に使用する。 ④反応時間測定装置を一部組み立てるための物品購入費として使用する。
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