近世武芸の研究の多くは、武芸・武術の名人・達人に着目するものが多い。しかし、軍事政権でありながら200年以上戦乱のない時代の中で、武芸界や武士階級に最も影響を与えたのは、武芸政策に影響力をもった為政者である。 近世武芸の一側面として、直接的な軍事力以上に、天地万物の理に適った技の追求の姿勢と修得の過程が、高度な技の発現だけでなく、広く社会や政治を高度に処していくことに通ずるという認識が見られた。特に、徳川吉宗の血統を受け継ぐ人物の中に、幕政において重要な役割を果たした人物がおり、これらの人物が家伝の武芸を重視し、そこで培った武芸思想に基づいた施政方針や政治思想を展開していたことが窺えた。
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