平成26年度は柔道場面において投げ技を施された「受け」がおこなう受け身時に身体が曝される力学量の定量化に研究の焦点を当てた。具体的内容は日本武道学会において報告した。これまでの研究から柔道競技中や練習中の死亡や高度機能障害を導く機序は頭部の変位から起こる直接および間接的な脳への衝撃力であるといわれている。特に技を施された「受」の頭部が曝される回転・加速について焦点があてられている。そして、この衝撃力や回転・加速を身体各分節の連動により緩衝させる技術が「受身」である。そこで動作解析をビデオ法を用いて記録しDLT三次元解析法を用いて3次元変位の力学量を算出した。具体的方法として被験者は「受」身長170.9cm体重90.5kg、「取」身長181.5cm体重83.0kgに依頼した。両名とも右組、年齢は22歳、柔道経験は10年以上、段位は3段、全日本学生優勝大会レベルの正選手として出場しているものであった。実験条件のうち採用された技は「大外刈」とした。「受」に対して、技を施されたのち①「後受身」をしてください。②「横受身」をしてください。の2条件の指示を出した。更に「受身をする際に頭部の固定を充分行う」という指示も加えた。「取」にはできるだけ自然な形で施技を行うこと。そして、各試行の施技に差が出ないよう指示した。ビデオカメラは4台用いて60コマ/秒で撮影を行った。本研究で特に注目したのは頭頂点と左右耳珠点を結んだ三角形と左右肩峰点を結んだラインがつくる変位であり、この変位から頭部の速度を算出した。これらの分析の結果「大外刈」を施され「受身」をした際の頭部の速度は「後受身」の場合、畳に接地直後、最大値3198deg/secが計測された。「横受身」の場合は接地直後1977deg/secとなった。この結果は「後受身」と「横受身」をおこなう際の頸周囲筋群の頭部固定への貢献度差が示唆された
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