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2012 年度 実施状況報告書

スポーツクラブに対する公的助成に関する日独比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 23500715
研究機関福島大学

研究代表者

黒須 充  福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (50170121)

キーワードスポーツクラブ / 公的助成 / 日独比較研究
研究概要

今年度は、日本の総合型地域スポーツクラブ関係者、クラブ会員、行政担当者等を対象に、クラブの財務状況や自治体のスポーツクラブに対する公的支援に関するインタビュー調査及び資料収集を行った。調査対象地は、富山県体育協会、ごうどスポーツクラブ(岐阜県)、掛川総合スポーツクラブ(静岡県)等である。
富山県を例に挙げれば、県内61クラブの予算総額(平成23年度)は10億1,824万円であり、年間予算(平均)をクラブの規模別に比較して見ると、100人未満の「小規模クラブ」は84万円、100人以上300人未満、300人以上500人未満の「中規模クラブ」はそれぞれ452万円と680万円、そして500人以上1,000人未満、1,000人以上の「大規模クラブ」はそれぞれ2,010万円と4,820万円であった。会員規模が大きくなるほど予算規模も大きくなっているが、これは単に会費収入の増加によるものだけではなく、指定管理やイベント、教室開催等の業務委託費を得ているクラブが多いことによるものと思われる。
ごうどスポーツクラブや掛川総合スポーツクラブのインタビュー調査からも、クラブ設立当初は助成金や補助金に依存する傾向が見られたが、徐々に自治体等からの信頼を得ながら、委託事業の割合を増やしていく傾向にあることが明らかとなった。
一方、上記のクラブ以外の財務状況を把握するために、ホームページ等で財務関連指標が公表されている15のクラブの分析を行ったところ、公的助成の削減を他の収入によって十分に補償することができず、その存続のために公的助成に頼らざるを得ないのが実情である点も明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、日独のスポーツクラブ関係者、クラブ会員、行政担当者等を対象に各種調査を行い、国や地方自治体が期待する公共の福祉に対して、スポーツクラブがどのような社会的効果を挙げているかについて検討することにある。
平成23年度は主にドイツのスポーツクラブを対象に調査を行い、公的支援を受けているクラブが全体の76.2%を占めること、助成金の大半が地方公共団体(市町村、郡、州)の財源が基になっていること、公的助成の削減に対し、それを他の仕方で補うことに限定的にしか成功していないことなどが明らかとなった。
平成24年度は主に日本の総合型地域スポーツクラブを対象に調査を行い、収入に占める会費収入の割合がドイツに比べて少ないこと、外部資金については、クラブ設立当初の助成金・補助金型から、徐々に委託事業型へと質的転換を図っていること、公的助成の削減を他の収入によって十分に補償することができず、その存続のために公的助成に頼らざるを得ないクラブも少なくないことなどが明らかとなった。
この2年間の日独の調査を通して、スポーツクラブは環境の変化(例えば公的助成金の削減など)をただ黙然と見守っているだけでなく、それに応じて対策を取る努力をすること、例えば会費やスポンサーを見つけるといった公的助成に代わる資金源から得られる収入を増やすことなど、収入を特定財源に依存するのではなく、多様な財源の確保に努めることが極めて重要であることが示唆された。

今後の研究の推進方策

平成23年度、24年度の調査研究で得られた具体的なデータに基づき、報告書、論文を作成する。その際、次の4つの論点(問い)から考察を行いたい。
(1) 公的なスポーツ支援はスポーツクラブにとって具体的にどのような意味を持っているか。
(2) スポーツクラブが公的支援から利益を得るだけでなく、公的予算の側もスポーツクラブから税金収入による利益を得ているとすれば、どの程度のものになるのか。
(3) 公的なスポーツ支援が果たす相乗効果は、例えば地域の価値創造に関してどの程度の重要性を持っているか。
(4) 公的なスポーツ支援が削減されてもスポーツクラブは生き延びることができるか。
また、日独のスポーツクラブは、単にスポーツを行う組織ではなく、地域住民が世代を超えて集う、極めて公益性の高いクラブとして、地域社会が抱える様々な社会問題や生活課題の解決にも大きく寄与する力を備えており、このために国家や地方自治体によってスポーツクラブを奨励する政策(直接的な助成金、税制上の優遇措置、公的施設の優先利用等)が取られてきたことことについて、「行動のための知」や「正当化のための知」の概念を援用し、日独の比較を行っていく。

次年度の研究費の使用計画

1.研究協力者との打ち合わせ
本研究の最終的な打ち合わせを行うため、ドイツを訪問する。旅費300,000円(ドイツー日本の往復航空代金、滞在費等)を予算に計上する。
2.ドイツ語論文の校閲
ドイツの学術誌に論文を投稿するため、ドイツ語論文の校閲を依頼する。人件費・謝金 200,000円(日本語→ドイツ語への翻訳)を予算に計上する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 「地域」と「企業」のスポーツ連携2013

    • 著者名/発表者名
      黒須 充
    • 雑誌名

      指導者のためのスポーツジャーナル

      巻: Vol.6 ページ: 16-20

  • [雑誌論文] スポーツを通じたより良い社会づくり2012

    • 著者名/発表者名
      黒須 充
    • 雑誌名

      福島の進路

      巻: No.364 ページ: 41-44

  • [雑誌論文] 市民社会の形成に寄与する総合型地域スポーツクラブの自己組織化に関する調査研究~富山県を事例に~2012

    • 著者名/発表者名
      黒須 充
    • 雑誌名

      SSFスポーツ政策研究

      巻: 第1巻第1号 ページ: 32-39

    • 査読あり
  • [学会発表] 総合型地域スポーツクラブの公的助成2012

    • 著者名/発表者名
      黒須 充
    • 学会等名
      第6回全国スポーツクラブ会議
    • 発表場所
      和歌山県田辺市紀南文化会館
    • 年月日
      20120519-20120520
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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